新藤兼人賞とは

日本映画の独立プロによって組織される日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが

「この監督と組んで仕事をしてみたい」「今後この監督に映画を作らせてみたい」

という観点からその年度で最も優れた新人監督を選びます。

他の映画賞とは全く違う選考基準を持ち、現役プロデューサーのみが審査員をつとめる日本で唯一の新人監督賞です。

「新人監督たちを発掘、評価し、今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」

というプロデューサー達の思いから1996年に「最優秀新人監督賞」として始まり、

2000年より“日本のインディペンデント映画の先駆者”である新藤兼人監督の名前をいただき現在の名称となりました。

受賞者には新藤監督デザインのオリジナルトロフィーと、

副賞として金賞には賞金50万円、銀賞には25万円を授与いたします。

プロデューサー賞

“優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者”の功績を称えることで

映画製作者への刺激を与え、日本映画界の活性化に繋げたいという願いから

2005年にプロデューサー賞は創設されました。

受賞者にはクリスタルクリスタルトロフィーと、副賞として賞金50万円を授与いたします。

※2005年〜2014年度まで一般社団法人私的録画補償金管理協会提供のSARVH賞として贈賞してまいりましたが、

2015年より「新藤兼人賞 プロデューサー賞」に生まれ変わりました。

対象作品選考規定

​【金賞・銀賞】

・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)

・監督がデビュー(劇場公開長編実写映画)から3作品目以内であること

  (アニメ、及びオムニバス作品の一編は作品数にカウントしない)

※公開とは有料で劇場及びホールで1週間以上有料上映された事を意味する。
※オムニバス映画の一編を監督した場合は作品数に含まない。
※アニメーションは作品数に含まない。

​【プロデューサー賞】

・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)

2019年度 

審査委員会

金賞・銀賞

協会所属の現役プロデューサーで構成される審査委員会にて討議を重ね、金賞、銀賞の受賞者を決定。

 審査員長

孫 家邦 (リトルモア) 

審 査 員

宇田川 寧(ダブ)

松田広子(オフィス・シロウズ)

山上 徹二郎(シグロ)

山本章(ジャンゴフィルム)

プロデューサー賞

協会加盟社からの推薦を募り、理事で構成される選考委員会にて受賞者を決定。

第24回 授賞式

2019年 12月 6日(金) 

如水会館 オリオンルーム

主催 

協同組合 日本映画製作者協会

特別協賛

東京テアトル株式会社

協賛

松竹株式会社

東宝株式会社

東映株式会社

株式会社KADOKAWA

日活株式会社

日本映画放送株式会社 

株式会社WOWOW

株式会社IMAGICA Lab.

株式会社ファンテック

Palabra株式会社

日本テレビ放送網株式会社

株式会社テレビ朝日

株式会社TBSテレビ

株式会社テレビ東京

株式会社フジテレビジョン

後援

文化庁

 

2019年度 

最終ノミネート監督/作品

金賞・銀賞

選考対象となった230作品の中から監督13名が最終候補に選ばれました

受賞者は11月25日に発表いたします。

(敬称略/順不同)

甲斐さやか      『赤い雪 Red Snow』

照屋年之         『洗骨』

片山慎三         『岬の兄妹』

鶴岡慧子         『まく子』

山崎 裕           『柄本家のゴドー』

奥山大史         『僕はイエス様が嫌い』

穐山茉由         『月極オトコトモダチ』

長久 允           『ウィーアーリトルゾンビーズ』

村上浩康         『東京干潟』/『蟹の惑星』

田中征爾         『メランコリック』

オダギリジョー 『ある船頭の話』

真利子哲也      『宮本から君へ』

箱田優子         『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

受賞者には、正賞として故・新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として、

金賞には賞金50万円ならびにUDCast賞(※1)、銀賞には賞金25万円を贈呈します。

※1 UDCast賞:Palabra株式会社提供。

金賞作品のバリアフリー日本語字幕制作費、

視覚障害者用音声ガイド制作費、UDCast導入費

2019年度

新藤兼人賞

選考結果発表

金 賞

村上 浩康 監督 

『蟹の惑星』

『東京干潟』

銀 賞

田中征爾 監督 

『メランコリック

プロデューサー賞

河村光庸  

『新聞記者』

 

2019年度  

第24回新藤兼人賞受賞結果

金賞

村上浩康

製作・撮影・編集・監督

MURAKAMI Hiroyasu

『東京干潟』『蟹の惑星』

劇場公開日:2019年7月13日

『東京干潟』『蟹の惑星』

製作・撮影・編集・監督:村上浩康 音楽:田中館靖子 タイトル文字:岩渕俊彦(紙町銅版画工房)

宣伝協力:株式会社リゾーム

『東京干潟』2019年製作/日本/83分  

『蟹の惑星』2019年製作/68分/日本 

(C)2019 TOKYO HIGATA PROJECT

『オリンピックに向けて変わりゆく東京の現在(いま)を

人と自然から捉えた連作ドキュメンタリー映画』

【ストーリー】

『東京干潟』

多摩川の河口でシジミを獲るホームレスの老人。彼は捨てられた十数匹の猫を殺処分から救うため、日々世話をしながら干潟の小屋で10年以上暮らしている。80代半ばと思えない強靭な肉体を持つ老人は、シジミを売ったわずかな金で猫のエサと日々の糧を得ている。彼は素手で漁をする。それはシジミと共存していく為に、成長途中の稚貝は絶対に獲らないと自ら厳しく決めているからだ。しかし近年、一部の人々により無計画な乱獲が始まり、シジミの数は激減していく。映画は、変わりゆく環境の中で懸命に猫たちと生きる老人の姿を描くと共に、彼の波乱に満ちた人生へも分け入っていく。炭鉱町に生まれ、返還前の沖縄で米軍基地に憲兵として勤務し、本土に帰国後、建築関係の会社を起業し、バブル期の東京の街を作りあげてきた男の人生。2020年のオリンピックを目前に控え、干潟には橋が架かり、沿岸には高層ホテルが建てられる。変わりゆく東京の姿を彼は複雑な思いで見つめる。昭和から平成、そして令和へと時代が移ろうなかで、都市の “最下流”多摩川の河口から、一人の人間の生き様を追いつつ、環境破壊・高齢化社会・格差問題・ペット遺棄など、様々な日本の現在(いま)を浮き彫りにする。

『蟹の惑星』 

多摩川河口の干潟は狭い範囲に、多くの種類のカニが生息する貴重な自然の宝庫である。大都会の中で、これほどのカニが見られる場所はかなり珍しい。吉田唯義(ただよし)さんは、ここで15年に渡って独自にカニの観察を続けている。毎日のように干潟を訪れては、カニたちの生態を調べ記録しているのだ。吉田さんは誰よりも多摩川のカニに詳しいが、その視点はとてもユニークで、他の人が考えつかないような方法でカニたちの生態を調べている。映画は吉田さんと干潟をフィールドワークしながら、カニたちの驚くべき営みを見つめていく。カメラはカニたちに限りなく接近し、肉眼では決して捉えられない世界を映し、迫力あるフォルムと美しい色彩が画面いっぱいに拡がる。そして小さなカニたちの営みが地球や月など、宇宙とも結びついていることを解き明かし、さらには戦争や震災が与えた現実の問題までを描き出す。身近な自然に目を向けることの大切さと、都市の中にある別世界を描く全編“カニづくし”のワンダームービー。

受賞者コメント

このたびは偉大なる先輩の名前を冠した賞を受賞させていただき本当にありがとうございます。非常に光栄であると同時に身が引き締まる思いであります。先ほどご紹介をいただきましたこの映画『東京干潟』と『蟹の惑星』は、基本的には1人で作り、1人で公開をいたしました。もちろん所々色んな方のご協力のもとに制作させていただいてはいるのですが、基本的には1人で制作から公開まで行いました。いろんな形の映画がありますが、今から思うと、この2作品は逆に1人じゃないと撮れなかった映画だと思っています。特に東京干潟のほうは、多摩川に住んでいらっしゃるホームレスのおじいさんを取材した作品で、当然そのおじいさんのプライバシーやそういったところに分け入っていくわけです。そういった時にやはり一対一で向き合ったからこそ深まる人間関係や、一対一で向き合ったからこそ心を開いてくれてここまで撮らせていただいたということがありました。半面、映画ができて公開興行となると、やはり1人では限界があり、東京、横浜、大阪と名古屋で公開させていただいたんですが、なかなか苦戦をいたしまして、東京と言うタイトルがついているせいもあるのかもしれませんが、特に名古屋、大阪で苦戦をして、映画館には申し訳なかったなという気持ちもあります。新藤兼人監督と言えば、もちろん偉大な映画監督、シナリオライター、映画プロデューサーなのですが、忘れてはいけないのが素晴らしいドキュメンタリーも撮っていらっしゃる事です。『ある映画監督の生涯』という、新藤兼人監督の心の師匠である溝口健二監督の記録映画を、20歳前後の若い頃に観てすごくびっくりした記憶があります。というのは、この映画は溝口監督が亡くなられた後に俳優さんやスタッフなどゆかりのある方々にインタビューしてその証言を綴った作品なのです。なので溝口健二監督は画面には登場しないのです。ところが、溝口健二の人間性とか映画感、芸術感というものがものすごく立ち上がってくるのです。ドキュメンタリーというのはこういうこともできるのだとすごく印象深く驚いた記憶があります。その時は、自分が将来ドキュメンタリーを撮るとは微塵も思っていなかったんですけども。こじつけのようですが、今考えると将来のその時に将来の種が蒔かれたのかもしれません。独立プロの厳しい状況の中で創作活動を続けてこられて、また今言いましたように素晴らしいドキュメンタリーも撮られて、なおかつ100歳まで映画を撮っていた。僕も新藤兼人監督を目指すとはちょっとおこがましくて言えませんが、100歳でドキュメンタリーを撮った人は多分まだいないと思うのでそこを目指してこれからも頑張っていきたいと思います。受付のところにチラシがありますが、ポレポレ東中野さんで12月21日から28日まで八日間アンコール上映をやっていただけることになり、来年は横浜シネマリンさんで2月15日から1週間上映されますので、よろしければご覧ください。本日はどうもありがとうございました。

銀賞

劇場公開日:2019年8月3日

監督・脚本・編集:田中征爾 プロデューサー:皆川暢二 撮影:髙橋亮 助監督:蒲池貴範 

録音:宋晋瑞、でまちさき、衛藤なな 特殊メイク:新田目珠里麻 TAディレクター:磯崎義知 

キャスティング協力:EIJI LEON LEE スチール撮影:タカハシアキラ 製作補助:羽賀奈美、林彬、汐谷恭一 

出演:皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹、羽田真 、矢田政伸 、浜谷康幸、ステファニー・アリエン、大久保裕太、

山下ケイジ、新海ひろ子、蒲池貴範 ほか

製作:OneGoose 配給:アップリンク、神宮前プロデュース、One Goose 宣伝協力:アップリンク 

宣伝:近藤吉孝(One Goose) 

ポスターデザイン:五十嵐明奈 後援:VーNECK、松の湯 

2018年/日本/DCP/シネスコ/114分 (C)One Goose

『メランコリック』

監督・脚本・編集

田中征爾

『メランコリック』

T A N A K A  S e i j i

『変幻自在な展開とサプライズ満載のストーリー。

日々を憂鬱と感じるすべての人に送る、巻き込まれ型サスペンス・コメディの誕生』

ひょんな事から人生が大きく動き出してしまう登場人物たちの人間模様を、深夜に人が殺される銭湯を舞台に、ドラマ、サスペンス、コメディ、ホラー、アクション、青春、恋愛など様々なジャンルを横断しながら描いたサスペンス・コメディ。

主人公・和彦を演じた俳優の皆川暢二の呼びかけにより、アメリカで映画制作を学んだあとIT業界でサラリーマンをしていた田中征爾と、俳優の傍らタクティカル・アーツ・ディレクターとしても活躍する磯崎義知という同い年3人で立ち上げた映画製作ユニットOne Goose( ワングース )による映画製作第一弾作品。

名門大学を卒業後、アルバイトを転々とし、うだつの上がらない生活を送っていた和彦。ある日、偶然訪れた銭湯で高校時代の同級生・百合と再会した彼は、そこで一緒に働かせてもらうことに。やがて和彦は、その銭湯が閉店後の深夜に浴場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。さらに、同僚の松本が殺し屋であることが明らかになり……。

【ストーリー】

受賞者コメント

『メランコリック』の監督、脚本をしました田中征爾と申します。このたびは本当にありがとうございます。『メランコリック』は、銭湯で人が殺されてたという映画なのですが、そもそもアイディアはゼロベースで、2017年の3月に、今回主演・プロデューサーを務めた皆川くんから声をかけてもらい、準主演の磯崎と同い年の男3人で自分たちで映画を作ろうと始まった映画なんです。去年の10月に東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で初めて上映されてから今日に至るまで多分4、5回くらい「今日からスタートラインに立てた気持ちです」と言ってるんですけども、また今日も言いたくなる感じです。やっと映画監督としてスタートラインに立てた気持ちなのです。多分2作目を撮っても言っていると思います。実は、この賞自体は去年から「ずっと憧れがあるんだよね」みたいなことを皆川くんたちに漏らしていたので、こうして選ばれてほんとにびっくりしています。映画ファンの間では、毎年12月のあたりに「今年は豊作だった」と多分毎年言っていると思うのですが、僕らの映画が今年の8月に公開されたこともあり、今年上映された映画の動向をすごくみていて、やっぱりすごく面白い映画が多かった年なんだなと思っていて…新藤兼人賞のノミネート作品のラインナップが発表されて、まぁここに名前が乗っただけでも良かったなと思うほど面白い作品が並んでいたので、銀賞受賞の連絡をいただいた時にはちょっとびっくりしました。今回は劇場公開作品としては初めての作品なのですが、自分の中にはかなり反省点もあるので、2作品目3作品目と、もっと面白い映画を作りあげていければと思っています。僕らは自主映画で始まったので、こういう場に慣れてない一番の証としてプロデューサーの皆川君がびっくりする位の普段着で来てるのですが、後で声をかけてあげてください。彼は今後俳優をやっていくつもりなので。あと、ヒロインの吉田芽吹ちゃんも来てるので、映画を作られる方はぜひ声をかけてあげて下さい。今日は本当にありがとうございました。

【金賞・銀賞  審査員会】

協会所属の現役プロデュサーによって審査委員会で授賞候補作品を選定し討議を重ね、金賞1作品、銀賞1作品を決定。

審査員長

孫 家邦 (リトルモア)

審 査 員

宇田川 寧(ダブ)

松田広子(オフィス・シロウズ)

山上 徹二郎(シグロ)

山本章(ジャンゴフィルム)

金賞・銀賞 講評

《審査員長 総評》

孫 家邦(リトルモア)

本年度の選考対象作品は230作品(前年度185作品)。

増え続ける本数に対応するべく審査会の有り様を少し変えました。 ①選考会の回数を増やし、②出来るだけ優秀な作品が漏れぬよう情報を共有し、③選考に至る前に選者が観る態勢を早めに準備し、④余裕をもって各選者が思考するため事前に最終選考作品(本年度13本)を選出、発表する、という風に。 ③に関して、やむを得ず劇場で観ることのできない選者のため、関係するプロダクション・配給会社の皆さんにDVDの送付をお願いする頻度が例年に増して多かったように思います。この場を借りて御礼申し上げます。 ④については、発表した最終候補の本数がいささか多かったように思いますが、例年にまして各作品のレベルが高かった、とご理解頂ければ幸いです。

受賞された作品は、図らずも最小単位かそれに近い単位(1人?3人?)のプロダクションで製作された作品でした。

選考の議論の中ではその点に関して討議されることはなかったのですが、選者たちが “原初的な輝き”とか“無垢”とか、無意識にそんな感覚を大事にしたのかもしれません。

ともあれ、村上さん、ドキュメンタリーの金賞は初めてらしいです。おめでとう!

田中さん、会社勤めをしながらの挑戦、おめでとう!

作品の内容についてはここでは語りません。この素晴らしい映画たちに出会った観客の数が、残念ながらとても少ないことが判っていますので、新藤兼人賞受賞!という情報をきっかけにして、できるだけ白紙の状態でたくさんの方にご覧になって頂きたいという思いです。

そして願わくば、皆様の心のうちで、いい選考結果だった!と得心できるようなご感想が生まれ、ご自身がお書きになるだろう“ほんとうの講評”をお読み頂けることを、心から祈っております。 

《審査員 講評》

宇田川 寧 (ダブ)

これからの邦画界を背負う監督を選ぶ新藤兼人賞の2019年度審査会に初めて参加させていただけたことは誠に光栄であり、このような機会をいただき、新藤代表理事をはじめ孫審査委員長ほか関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。今年度の対象作品は、過去最高となる昨年の185作品を上回る230作品だったそうで、多くの新人監督たちの発想力と演出力を思う存分に楽しませてもらいました。『まく子』『月極オトコトモダチ』はキャスティングが素晴らしく、両監督の演出力にも目を見張るものがあり特に印象に残りました。次回作が楽しみです。『洗骨』『宮本から君へ』も監督の力量を感じる力強い作品でした。

劇映画の受賞が多い本賞でドキュメンタリー映画『蟹の惑星』『東京干潟』が金賞に選ばれたのはその卓越した取材力と構成力によるもので、選考会でも絶賛されました。同じく評価の高かった銀賞の『メランコリック』は、監督の発想力と演出力だけでなく、スクリーンから目が離せなくなるストーリー構成の巧さと、限られた条件の中でエンターテインメントを追求し仕上げた力量が光っていました。受賞者の両監督には心よりお慶び申し上げますと共に今後のご活躍に期待しています。私自身とても有意義な経験をさせていただいた一年でしたが、本賞の選考理由でもある“この監督と組んで仕事をしてみたい”と思わせてくれる監督が毎年どんどん増えてきている気がします。本年度対象作品の各監督の次回作も、大いに楽しみにしています。

松田広子(オフィス・シロウズ)

メジャー映画も卒業制作も交えての約230本から、何を基準に?と悩みつつも最終的にはとにかく印象に残り面白かった作品を推しました。『東京干潟』『蟹の惑星』は、配役(対象と出会う力)と撮影、構成が素晴らしく、フィクションとドキュメンタリーを同じ俎上で比べる難しさをひょいと超えてしまいました。限られた場所での個人の話が世界へと繋がるような大きさがありました。銀賞作品『メランコリック』はグロい内容のはずなのにほのぼのとした後味、予想を裏切り続けるサービスぶりに「今」を感じた作品。個人的には監督の思いを強く感じた『岬の兄妹』が好きでした。妹に身体を売らせるというひどい状況なのに、映画の力で昇華されていく、いくつかの美しいシーンが忘れがたく心に残っています。

『僕はイエス様が嫌い』は自身の記憶をフィクションに仕立てるセンスを感じました。『ブルーアワーにぶっ飛ばす』も監督自身を反映したと聞く主人公のキャラクターに惹かれましたが、“仕掛け”が今一つ腑に落ちなかったのが残念。次回作に期待です。柄本明主演?作の『柄本家のゴドー』『ある船頭の話』。前者は演じることの“凄まじさ”を捕らえて見応えがあり、後者は寓話世界を豊かな映像と音で静かに語り魅力的でした。

スタッフ不足に反比例して新人監督がこれだけの数生まれていることの是非はともかく、それでも映画はつづく、と改めて思う貴重な体験をさせていただいたことに感謝いたします。

山上徹二郎 (シグロ)

新藤兼人賞金賞に、初めてドキュメンタリー映画『東京干潟』『蟹の惑星』の村上浩康監督が選ばれた。製作過程も製作費の規模も、劇映画とは全く異なるドキュメンタリー映画を金賞に押すことに私自身は躊躇していたが、審査員の一致した意見で選ばれたことは、意外性とともに長年ドキュメンタリー映画を製作してきた私にとってうれしい受賞だ。

公開時の興行成績だけでみればヒット作ではないし、単館で公開されたロングラン作品なのだが、おそらくほとんど知られていない映画ではないかと思う。しかし受賞作の2作品には、なぜ人は映画を作りたいと思うのか、その思いを自己実現するには何が本当に必要なのか、という表現における極めて原点的な問いが描かれている。このことは劇映画だろうと何ら変わるところはない。

また最後まで選考に残った『柄本家のゴドー』は、優れたカメラマンである山崎裕氏の監督作品だが、ドキュメンタリー映画の作品性にとって安定した映像とその美学がいかに重要かということに気づかせてくれる秀作だった。

銀賞受賞の田中征爾監督の『メランコリック』も金賞に値する作品だった。映画でしか描けない世界観をしっかりエンタテインメントに仕上げた手腕が素晴らしい。すぐにも次回作を期待したくなるほどに、田中監督の演出と俳優陣が魅力的だった。

『赤い雪』『まく子』『岬の兄弟』は受賞こそ逃したが、今後映画界でその名前を必ず見かけることになるだろう映画監督たちの登場となった。

最後に、今年の賞の選考はこれまでになく充実したものだった。委員長を務めた孫家邦氏の審査への熱意が真摯な議論を担保したことに、感謝の言葉を記しておきたい。

山本 章 (ジャンゴフィルム)

新しい時代の幕開けとなった令和最初の新藤兼人賞・金賞は村上浩康監督『東京干潟』『蟹の惑星』がドキュメンタリー映画として初の金賞受賞という快挙を達成しました。銀賞の田中征爾監督『メランコリック』とは僅差でした。 惜しくも両賞には洩れてしまいましたが片山慎三監督『岬の兄弟』が最後まで賞選考に残っていたことを追記しておきます。

金賞の『東京干潟』『蟹の惑星』は異例の連作での初受賞ともなりました。『東京干潟』ではシジミを獲る老人を、『蟹の惑星』では15年間独自の蟹の観察を続けている老人を4年間に渡って多摩川河口の干潟で粘り強く取材撮影された渾身の作品でした。映画を通して、自然環境問題や高齢者問題等を考えさせられますが、何よりも被写体であるお二人のご老人の生き様が魅力的でした。銀賞の『メランコリック』は奇想天外でありながら、ひょっとしたらあり得るかもしれないという舞台設定が絶妙でした。低予算を逆手にとっての演出・キャスティングもむしろ作品の強みになっていたと思います。『岬の兄弟』は自主映画ではないと成立しないであろう重たく辛いテーマを、時折見せる主人公の一瞬の幸せな描写や笑いを交えてユーモラスな人間ドラマに仕上げた片山慎三監督と俳優陣の演技に感服しました。

照屋年之監督『洗骨』も最終選考で評価の高い作品でした。沖縄の離島に残る独特な死者送りの風習を通して死生観や家族の絆や人間愛を改めて考えさせられる人間原点回帰の笑って泣けるヒューマンストーリーに癒されました。最終ノミネート作品の中で異彩を放っていた『ウィーアーリトルゾンビーズ』の長久允監督の次回作にも期待しております。

プロデューサー賞

河村光庸

企画 製作 エグゼクティヴ・プロデューサー 原案

KAWAMURA Mitsunobu

『新聞記者』

『新聞記者』

劇場公開日:2019年6月8日

監督:藤井道人 脚本:詩森ろば 高石明彦 藤井道人 音楽:岩代太郎 

原案:望月衣塑子「新聞記者」(角川新書刊) 河村光庸 企画・製作:河村光庸 

エグゼクティヴ・プロデューサー:河村光庸 岡本東郎 プロデューサー:高石明彦  

撮影:今村圭佑 照明:平山達弥 

出演:シム・ウンギョン 松坂桃李 本田翼 岡山天音 西田尚美 高橋和也 北村有起哉 田中哲司

製作幹事:VAP 制作プロダクション:The icon 宣伝:KICCORIT 制作:スターサンズ 

配給:スターサンズ イオンエンターテイメント 

製作:2019『新聞記者』フィルムパートナーズ 

2019年製作/日本/113分 © 2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

『権力とメディアの“たった今”を描く、

前代未聞のサスペンス・エンタテイメント』

一人の新聞記者の姿を通して報道メディアは権力にどう対峙するのかを問いかける衝撃作。

東京新聞記者・望月衣塑子のベストセラー『新聞記者』を“原案”に、政権がひた隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若手エリート官僚との対峙・葛藤を描いたオリジナルストーリー。権力とメディアの“たった今”を描く、前代未聞のサスペンス・エンタテイメント。『怪しい彼女』『操作された都市』などのシム・ウンギョンと、『娼年』『孤狼の血』などの松坂桃李が共演。監督は、『オー!ファーザー』『デイアンドナイト』などの藤井道人。

 

東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名 FAX で届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる。

【ストーリー】

受賞者コメント

作っちゃいけない映画を、禁断の映画を、このように評価していただいて、大変光栄に思っています。

この映画の前、相当昔になりますが、新藤兼人監督の「裸の島」を拝見して、ものすごくびっくりしました。先ほど新藤監督は脚本が上手という話がございましたが、全く台詞がないのです。もののみごとに無言のまま、何かに向かって反骨している。私は、新藤監督を反骨の人と思っております。

この20年間、特に若い人に「リスクマネジメント」「コストパフォーマンス」「コンプライアンス」が蔓延している。この3つのことは、会社に入ると徹底的に教育される。「リスクマネジメント」というのは、ハイリスクをさける、「コンプライアンス」は、これは法令遵守ですけども、全く見えない巨大な圧力を感じるようなそうした空気というか、私は同調圧力と称していますがそういったこと、「コストパフォーマンス」これは物の価値をお金で全て基準にして考えている。こうしたことによって、社会全体が委縮され、非常に不寛容で不自由な時代になりつつある気がしています。この映画を作ったきっかけもそういうことで、先ほど述べた新しい三種の神器、その中でコストパフォーマンスはともかく、その他ふたつは、徹底的に無視して映画を作りたいと思っていました。同調圧力があったかといえば、びっくりするほどなくて、しかもネットでも騒がれなかった。実は、堂々と作り発表していって、しかも大きくやっていけばそういったことは起こらないのだと、何か幻想に対しておびえているような社会であると実感しました。そういうことを含め、反骨の人新藤兼人さんを記念すべき賞をいただき大変光栄に思っています。

【プロデューサー賞選考委員会】

協会加盟社から推薦を募り、理事で構成される選考委員会で、討議を重ね、受賞者を決定。

プロデューサー賞 講評

日本映画製作者協会 理事

山上徹二郎(シグロ)

今年のプロデューサー賞は、日映協の会員からの推薦も理事会でも意見が割れることなく河村光庸氏に決定した。今年の話題作でありヒット作である『新聞記者』(藤井道人監督)での受賞となった。

河村氏がプロデューサー賞を受賞する機会は過去に何度もあったように思う。2017年に公開された『あゝ、荒野』(岸善幸監督)は前編・後編ともにいまだに強く印象に残っている作品であり、また2012年公開の注目作『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)でも数々の映画賞とともに藤本賞特別賞を受賞している。

自ら映画作品を企画・製作し、また作品の骨格にも深く関わる実質的なプロデューサーとして、本賞の趣旨に照らして、河村氏はもっともふさわしい受賞者だ。また、現在公開中の『宮本から君へ』(真利子哲也監督)と『i-新聞記者ドキュメント-』(森達也監督)もともに河村氏のプロデュース作品であり、今年3作品が公開されていることも注目に値する。

高いメッセージ性を持ったテーマを、エンタテインメント作品として劇場用映画に仕上げ、また配給・宣伝まで一貫して映画をプロデュースしてきた河村氏の手腕には、プロデューサーとして見習うべき点が多い。

更に、『新聞記者』と『i-新聞記者ドキュメント-』という2作品の相次ぐ公開は、時の権力者に委縮し忖度することに馴らされてきた日本のマスメディアの中にあって、孤独な闘いを強いられている新聞記者たちに大きな勇気と矜持とを与えたことも評価されて然るべきであろう。

【審議された作品】

2019年金賞・銀賞の選考対象となった230本の中から審査委員会にて選出、審議された監督・作品

(敬称略・順不同)

甲斐さやか『赤い雪 Red Snow』、田中征爾『メランコリック』、片山慎三『岬の兄妹』、真利子哲也 『宮本から君へ』、

箱田優子『ブルーアワーにぶっ飛ばす』、村上浩康『東京干潟』『蟹の惑星』、長久 允『ウィーアーリトルゾンビーズ』、

オダギリジョー『ある船頭の話』、奥山大史『僕はイエス様が嫌い』鶴岡慧子『まく子』、穐山茉由『月極オトコトモダチ』、

山崎 裕『柄本家のゴドー』、照屋年之『洗骨』

〈最終ノミネート監督・作品として発表された13名〉

〈三次選考通過監督・作品〉

井樫 彩『真っ赤な星』、平松恵美子『あの日のオルガン』、玉田真也『あの日々の話』、佐々木 誠『ナイトクルージング』、広瀬奈々子『夜明け』、井上雅貴『ソローキンの見た桜』、加納 土『沈没家族 劇場版』、ふくだももこ『おいしい家族』、杉田協士『ひかりの歌』、工藤梨穂『オーファンズ・ブルース』、佐藤零郎『月夜釜合戦』

第24回 授賞式

2019年 12月 6日(金) 

如水会館 オリオンルーム

主催 

協同組合 日本映画製作者協会

特別協賛

東京テアトル株式会社

協賛

松竹株式会社

東宝株式会社

東映株式会社

株式会社KADOKAWA

日活株式会社

日本映画放送株式会社 

株式会社WOWOW

株式会社IMAGICA Lab.

株式会社ファンテック

Palabra株式会社

日本テレビ放送網株式会社

株式会社テレビ朝日

株式会社TBSテレビ

株式会社テレビ東京

株式会社フジテレビジョン

後援

文化庁

 

過去受賞結果

 年 度

金  賞

銀  賞

プロデューサー賞受賞者

中野量太  『湯を沸かすほどの熱い愛』

小路紘史    『ケンとカズ』

岨手由貴子 『グッド・ストライプス』

松永大司    『トイレのピエタ』

進藤淳一

天野真弓       PFFスカラシッププロデューサー

久保田直  『家路』

原桂之介    『小川町セレナーデ』

成田尚哉   『海を感じる時』

(若手監督育成に対して)

白石和彌  『凶悪』

奥谷洋一郎   『ソレイユのこどもたち』   

孫家邦     『舟を編む』

菊地美世志

蜷川実花    『ヘルタースケルター』

『BRAVE HEARTS 海猿』

赤堀雅秋  『その夜の侍 』

亀山千広     『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

『テルマエ・ロマエ』 

『ロボジー』

『終の信託』

『ライアーゲーム -再生-』

『任侠ヘルパー』

『JAPAN IN A DAY(ジャパン イン ア デイ)

塙幸成   『死にゆく妻との旅路 』

近藤明男      『エクレール・お菓子放浪記』

新藤次郎   『一枚のハガキ』 

2010

呉美保   『オカンの嫁入り』

吉田恵輔      『さんかく』

桂壮三郎   『アンダンテ~稲の旋律~』

若松孝二   『キャタピラー』

2009

沖田修一  『南極料理人』

田口トモロヲ『色即ぜねれいしょん』

安田匡裕    『ディア・ドクター』

2008

小林聖太郎 『かぞくのひけつ』

森義隆   『ひゃくはち』

中沢敏明   『おくりびと』

本木雅弘

2007

佐藤祐市  『キサラギ 』

中村義洋    『アヒルと鴨のコインロッカー』

桝井省志   『それでもボクはやってない』

2006

マキノ雅彦 『寝ずの番』 

荻上直子  『かもめ食堂』 

渡辺謙   『明日の記憶』

2005

宮藤官九郎 『真夜中の弥次さん喜多さん』

内田けんじ 『運命じゃない人』

李鳳宇    『パッチギ!』 

2004

土井裕泰  『いま、会いにゆきます』

佐々部清  『チルソクの夏』『半落ち』

2003

李相日   『BORDER LINE』

竹下昌男   『ジャンプ』 

2002

橋口亮輔  『ハッシュ!』

西川美和      『蛇イチゴ』 

2001

新藤風   『LOVE/JUICE』

北村龍平      『VERSUS』 

2000

中江裕司  『ナビィの恋』

合津直枝      『落下する夕方』 

1999年

けんもち聡 『いつものように』

1998年

荒井晴彦  『身も心も』

1997年

松井久子  『ユキエ』

是枝裕和  『幻の光』  

Copyright(c) 2003 JFMA All rights Reserved