新藤兼人賞とは

日本映画の独立プロによって組織される日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが

「この監督と組んで仕事をしてみたい」「今後この監督に映画を作らせてみたい」

という観点からその年度で最も優れた新人監督を選びます。

他の映画賞とは全く違う選考基準を持ち、現役プロデューサーのみが審査員をつとめる日本で唯一の新人監督賞です。

「新人監督たちを発掘、評価し、今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」

というプロデューサー達の思いから1996年に「最優秀新人監督賞」として始まり、

2000年より“日本のインディペンデント映画の先駆者”である新藤兼人監督の名前をいただき現在の名称となりました。

受賞者には新藤監督デザインのオリジナルトロフィーと、

副賞として金賞には賞金50万円、銀賞には25万円を授与いたします。

プロデューサー賞

“優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者”の功績を称えることで

映画製作者への刺激を与え、日本映画界の活性化に繋げたいという願いから

2005年にプロデューサー賞は創設されました。

受賞者にはクリスタルクリスタルトロフィーと、副賞として賞金50万円を授与いたします。

※2005年〜2014年度まで一般社団法人私的録画補償金管理協会提供のSARVH賞として贈賞してまいりましたが、

2015年より「新藤兼人賞 プロデューサー賞」に生まれ変わりました。

対象作品選考規定

​【金賞・銀賞】

・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)

・監督がデビュー(劇場公開長編実写映画)から3作品目以内であること

  (アニメ、及びオムニバス作品の一編は作品数にカウントしない)

※公開とは有料で劇場及びホールで1週間以上有料上映された事を意味する。
※オムニバス映画の一編を監督した場合は作品数に含まない。
※アニメーションは作品数に含まない。

​【プロデューサー賞】

・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)

2019年度 

審査委員会

金賞・銀賞

協会所属の現役プロデューサーで構成される審査委員会にて討議を重ね、金賞、銀賞の受賞者を決定。

 審査員長

孫 家邦 (リトルモア) 

審 査 員

宇田川 寧(ダブ)

松田広子(オフィス・シロウズ)

山上 徹二郎(シグロ)

山本章(ジャンゴフィルム)

プロデューサー賞

協会加盟社からの推薦を募り、理事で構成される選考委員会にて受賞者を決定。

第24回 授賞式

2019年 12月 6日(金) 正午

如水会館 オリオンルーム

協同組合 日本映画製作者協会

主催 : 

 

2019年度 

最終ノミネート監督/作品

金賞・銀賞

選考対象となった230作品の中から監督13名が最終候補に選ばれました

受賞者は11月25日に発表いたします。

(敬称略/順不同)

甲斐さやか      『赤い雪 Red Snow』

照屋年之         『洗骨』

片山慎三         『岬の兄妹』

鶴岡慧子         『まく子』

山崎 裕           『柄本家のゴドー』

奥山大史         『僕はイエス様が嫌い』

穐山茉由         『月極オトコトモダチ』

長久 允           『ウィーアーリトルゾンビーズ』

村上浩康         『東京干潟』/『蟹の惑星』

田中征爾         『メランコリック』

オダギリジョー 『ある船頭の話』

真利子哲也      『宮本から君へ』

箱田優子         『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

受賞者には、正賞として故・新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として、

金賞には賞金50万円ならびにUDCast賞(※1)、銀賞には賞金25万円を贈呈します。

※1 UDCast賞:.Palabra株式会社提供。作品のバリアフリー版制作費、

UDCast導入費、バリアフリー版制作実務

 

2018年度  

第23回新藤兼人賞受賞結果

金賞

監督・脚本:野尻克

製作:井田寛/エグゼクティブプロデューサー:深田誠剛/企画・プロデュース:小野仁史/プロデューサー:近藤貴彦
撮影:中尾正人/照明:秋山恵二郎/録音:小川武/美術:渡辺大智/塚根/編集:早野亮/衣裳:小里幸子/ヘアメイク:豊川京子/スチール:三木匡宏/キャスティング:山田恵理子/音響効果:吉田優貴/新体操指導:山本里佳/VFX スーパーバイザー:田中貴志/助監督:小南敏也/ラインプロデューサー:伊達真人/音楽・主題歌:明星/Akeboshi(RoofTop Owl) 出演:岸部一徳 原日出子 木竜麻生 加瀬亮 岸本加世子 大森南朋
製作:松竹ブロードキャスティング/制作プロダクション:ハーベストフィルム/配給:松竹ブロードキャスティング/ビターズ・エンド/宣伝:ビターズ・エンド/シャントラバ/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

[2018年/日本/133分/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP] ©松竹ブロードキャスティング

『鈴木家の嘘』 2018年11月16日公開

野尻克己

『鈴木家の嘘』監督・脚本

Katsumi NOJIRI

【ストーリー】

鈴木家の長男・浩一がある日突然この世を去った。ショックのあまり記憶を失った母のため、遺された父と長女は一世一代の嘘をつく。「引きこもりだった浩一は 家を出て、アルゼンチンで働いている」と。父は原宿でチェ・ゲバラの T シャツを探し、娘は兄に成りかわって手紙をしたため、親戚たちも巻き込んでのアリバイ 作りにいそしむ。すべては母の笑顔のために。 母への嘘がばれないよう奮闘する父と娘の姿をユーモアたっぷりに描きつつ、悲しみと悔しみを抱えながら再生しようともがく家族の姿を丁寧に優しく紡ぐ感動 作。 劇場映画初監督の野尻克己は、脚本も自ら手掛けたオリジナル作品で、家族の死と、そこからの再生という重厚なテーマを心に沁みいるハートウォーミングな喜劇に仕立て、まったく新しい家族映画の傑作を誕生させた。 鈴木家の家長である父・幸男役に岸部一徳、母・悠子役に原日出子、長男・浩一役に加瀬 亮、そしてワークショップを経て400名もの応募者から選ばれた木竜麻生が鈴木家の長女・富美を演じる。

受賞者コメント

 ご挨拶の前に、生前お世話になった黒澤満さんのご逝去を悼み、謹んでお悔み申し上げます。僕が子供のころに観た作品を思い返して、黒澤さんは、 とてもかっこいい不良で優しいプロデューサーだなと思っておりました。安らかにお眠りください。まずはこの場を借りまして、スタッフ、キャストにお礼を申し上げたいと思っています。『鈴木家の嘘 』で映画監督になることができましたので、本当に感謝をしたいと思っております。加えて、今回の審査員の方々にも、私の作品を観ていただき、このような賞をいただきましたことを深く感謝いたします。本当にありがとうございます。賞というものはあまり貰ったことがないので、気持ちとしてはなんとなく喜んでいいのか、すごく緊張の方が勝っているのですが、とにかく嬉しく思っております。
新藤兼人監督の冠がついた賞をいただいたということは、映画監督としてスタートラインに立てたということと同時に、新藤監督は生涯250本以上の脚本を書き、100歳まで監督をされていたということなので、僕には新藤兼人監督の背中を追いつつ抜かすという目標ができました。100歳まで映画を撮れるかどうかはわかりませんが、引き続き作品を撮っていきたいと思っております。どうぞ皆様、応援の方よろしくお願いします。

銀賞

関根光才

『生きてるだけで、愛』監督・脚本

Kosai SEKINE

2018年11月9日公開

監督・脚本:関根光才 原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
製作・プロデューサー:甲斐真樹/製作:松井智 藤本款 板東浩二 新井重人 森原俊朗 前信介 上田豊 水戸部晃/アソシエイトプロデューサー:佐藤公美 金井隆治/協力プロデューサー:高口聖世巨 白川直人/撮影:重森豊太郎/照明:中須岳士/音楽:世武裕子/美術:井上心平/録音:山本タカアキ/編集:田巻源太/衣裳:立花文乃/ヘアメイク:田中マリ子/助監督:久保朝洋/制作担当:中村哲也/エンディング・テーマ:世武裕子『1/5000』(ポニーキャニオン)
出演:趣里 菅田将暉 / 田中哲司 西田尚美 / 松重豊 / 石橋静河 織田梨沙 / 仲里依紗 『生きてるだけで、愛。』製作委員会(ハピネット/スタイルジャム/クロックワークス/ひかりTV/日活/オデッサ・エンタテインメント/グラスゴー15/ポニーキャニオンエンタープライズ/ コンテンツ・ポテンシャル) 製作幹事:ハピネット、スタイルジャム/企画・制作プロダクション:スタイルジャム 配給:クロックワークス

[2018 年/カラー/109 分/シネマスコープ/5.1ch デジタル]©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

『生きてるだけで、愛』

小説家、劇作家、演出家として数々の作品を生み出してきた本谷有希子の同名小説を基に、趣里の主演で映画化。本作が劇場長編映画デビュー作となる 関根光才は、原作のエッセンスを受け継ぎつつ、趣里演じる寧子と、菅田将暉演じる津奈木の関係性によりフォーカスした脚本を執筆し、生身の人間に宿る心 のざらつきを 16mm フィルムで映し出した。生きてるだけで、ほんと疲れる。鬱が招く過眠症のせいで引きこもり状態の寧子と、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れながら寧子との同棲を続けている 津奈木。そこへ津奈木の元カノが現れたことから、寧子は外の世界と関わらざるを得なくなり、二人の関係にも変化が訪れるが......。

【ストーリー】

受賞者コメント

新藤兼人賞、銀賞いただき本当にうれしい限りで、審査会の皆様、関係者、皆様ご一同に感謝 を申し上げたいと思います。『生きてるだけで、愛。』 という作品については、3年ほど前にスタイルジャムの甲斐プロデューサーと出会うことができ本当に感謝しております。そこから紆余曲折色々ありましたが、3年ほどかけて映画ができ、その痛みを共にして、一緒に最後まで完成にこぎつけてくださった趣里さん、菅田さんはじめ素晴らしいキャストの皆さんと、本当に優秀な素晴らしいスタッフの皆さんに改めて感謝をさせていただきたい。 私個人としては、映像という業界に入って10年以上経ちますが、本編映画はこの映画をきっかけとしてのことなので、本当にまだまだ若輩ものです。そういった人間が、新藤兼人監督の 名前を冠した賞をいただけるということは本当にありがたく光栄です。 『生きてるだけで、愛。』という映画は、精神的に困難なことを抱えている人を描いた映画です。賛否両論がすごくあるだろうし、共感できないという人も沢山いるだろうと思っていたのですが、多くの方からメッセージを頂戴し、深く共感いただいている ことに正直とても驚きました。それほど、今の日本社会というのは、特に若い方にとっては閉塞感があるのかも知れませんが、どこかでそれを打ち破るような勇気や希望など、そういうことを映画から感じ取っていただけた。自分自身も映画によって人生を変えられた人間ですから、そうった映画にこうしたインディペンデントというスピリットを継承させていただけることをありがたく思っています。叱咤激励され る思いで、賞の名に恥じぬようこれからも頑張って映画を作り続けていきたいと思っています。よろしくお願いします。

【金賞・銀賞  審査員会】

協会所属の現役プロデュサーによって審査委員会で授賞候補作品を選定し討議を重ね、金賞1作品、銀賞1作品を決定。

審査員長

審 査 員

進藤淳一 (フイルムフェイス)

孫 家邦 (リトルモア)

豊島雅郎 (アスミック・エース)

桝井省志 (アルタミラピクチャーズ)

山上徹二郎 (シグロ)

金賞・銀賞 講評

《審査員長 総評》

進藤淳一(フイルムフェイス)

2018年度の新藤兼人賞は、2017年12月から2018年11月までに日本国内で劇場公開された作品のうち、公開本数が3本以内の新人監督作品185本が選考対象となりました。対象作品数は過去最多となりましたが、ドキュメンタリー作品が増えたように感じました。

審査員が手分けをして観る 1次選考を経て、2次選考からは全員が観て判断しました。今年も粒ぞろいで、力のあるおもしろい作品がたくさんあり、審査会はかなり白熱しました。 おかげで、審査員の意見が分かれ、最終審査会では決まらず、日を改めて本賞創設以来の「再・最終審査会」が開かれました。 最終的に野尻克己監督『鈴木家の嘘』と関根光才監督『生きているだけで、愛。』が金賞、銀賞に選ばれました。どちらも久しぶりの映画らしい力作で あったと思います。 監督の成り立ちもかなり違うのでそのあたりも選考の話題になりました。 銀賞受賞の関根光才監督『生きてるだけで、愛。』私はとても評価する作品です。普段であれば観ることのない映画あったかとは思いますが主演の二人を決めたことで監督の思いが伝わってきます。息を するのもつらくなるような映画でした。最終審査に残った、岩切一空監督『聖なるもの』新人には思えないアイデア満載の作品でした。鄭義信監督『焼肉ドラゴン』舞台の映画化でしたが各審査員が絶賛していました。力強い作品だと感じました。上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』この作品は今年の話題作であることに間違いはないでしょう。 製作予算と興行成績ばかりが話題になってしまいましたが斬新でとても面白い作品でした。 新人の監督や俳優さんにとっては諦めずに創り続けることの素晴らしさを改めて考えさせられる作品になったのではないでしょうか。山中瑶子監督『あみこ』は監督が19-20歳の時に作ったと聞いて吃驚しました。今回は受賞には至りませんでしたが次回作以降に大いに期待していす。

私がこの賞の審査員を務めるのは9回目になりますが、こういう機会がなければなかなか触れることのない作品や監督と出会えること、とても有意義な経験だと感じています。この中の何人もが日映協のプロデューサーと仕事すると考えるととても楽しみです。

《審査員 講評》

孫 家邦(リトルモア)

興行収入の低落と反比例して、今年の日本映画は豊作だったように思う。審査対象の作品群も概ねその傾向の下にあり、力あるものが多かった。『あみこ』、『聖なるもの』、『ウルフなシッシー』、『枝葉のこと』など魅力的な自主製作映画に出会えたことも嬉しかった。『カメラを止めるな!』がプロデューサー賞に推挙されることが決まり、受賞二作品と『焼肉ドラゴン』、甲乙付け難い3作品が順当に残った。『鈴木家の嘘』はある意味、奇跡の映画だ。最盛期を過ぎた撮影所システムが崩壊した後、かなりの本数の映画を製作してき我々インディペンデントプロダクションは、それまで大手のスタジオが担ってきた「技術の継承」、「人材育成」にまでなかなか手が回らなかった。 現場で経験を積んだ助監督を監督デビューさせるシステムをつくれなかった要因は色々ある。そのことについてはまたの場所で。『鈴木家の嘘』の野尻さんは、数多くの有能な監督の下で働いてきた。助監督出身の彼が様々なことを「継承」してきたことは、作品を観れば明らかである。こんな助監督受難の時代を生き抜き成立したこの稀有なる映画を奇跡と呼ぶことに迷いはない。また惜しくも選にもれた『焼肉ドラゴン』はもうひとつの金賞映画であることを記したい。優れた脚本家が、優れた監督になりうることを鄭義信は証明した。 さらにもうひとつ。 助監督が不遇をかこった時代の裏側に自主製作映画出身の監督の活躍があった。その中軸を担ったPFFからまた新しい才能が 生まれている。『サイモン&タダタカシ』は異形の傑作だった。 この破天荒な、「人間主義」などどこ吹く風、といった風情の活劇も機会があればぜひ観て頂きたいと、切に思う。

 豊島雅郎(アスミック・エース)

今年度の新藤兼人賞(新人監督賞)対象作品数は過去最高となる185本でした。金賞は野尻克己監督『鈴木家の嘘』、銀賞は関根光才監督『生き てるだけで、愛。』となりました。私が審査委員として参画させていただいている直近7年間では今年ほど議論が白熱した年はなかったと思いますので、いろいろな意味で2018年が新人監督作品の大豊作な一年であった証だと考えます。 そんな中での野尻監督と関根監督の栄えある受賞でもあり、なおのこと、お二方には心よりお慶びを申しあげたく存じます。また、最終選考に残った上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』はプロデューサー 賞に推す声が大きく金賞・銀賞からは漏れましたこと、および、鄭義信監督『焼肉ドラゴン』、岩切一空監督『聖なるもの』については最後の最後まで線 上に残っておりましたこともメンションさせていただきます。豊潤な新人監督作品のヴィンテージイヤーとなりました映画業界が、エンターテイメント産業 の中核を担い、益々発展しますことを願ってやみません。

 桝井省志(アルタミラピクチャーズ)

今年話題をさらった『カメラを止めるな!』を巡っては賛否両論あり、選考会も久々に侃々諤々の映画議論で多いに盛り上がった。野尻克己監督『鈴木家の嘘』は、自らの体験に依るオリジナル脚本が高い評価を得た。助監督経験を活かした安定した演出力の光る堅実な作品で、それを支えた松竹ブロードキャストキャスティングのオリジナル映画プロジェクトも高く評価したい。関根光才監督『生きてるだけで、愛。』は、CM出身にも拘らず映画らしい出来栄えの作品で、久々に日本映画に活を入れる肝の座った力溢れる作品となってる。

私としては、魅力的なこの二作品が金銀に選ばれ納得のいく選考となった。また、最終まで選考に残った『焼肉ドラゴン』の監督鄭義信氏は既に劇作家、脚本家として高い評価を受ける実績の持ち主で敢えて授賞は若手監督としたが、やはり作品の秀逸さは際立つ。その他『愛と法』『ウルフなシッシー』『聖なるもの』『あみこ』が印象に 残った。最終選考には残らなかったが、主にジャンルムービーで孤

軍奮闘中の西海謙一郎、藤村亨平、谷本佳織、堀江貴大、今野恭成、安田真奈、 小田学らの今後に期待したい。

 山上徹二郎(シグロ)

新人監督の公開本数は増え続けており、従来の映画とはまた違った形での作品性も確実に向上しているように思う。主に劇映画における低予算での映画製作の弊害もありつつ、新人監督たちの尽きせぬ表現のパワーは瞠目に値する。上田慎一郎監督の『カメラを止めな!』の他、岩切一空監督の『聖なるもの』や山中瑶子監督の『あみこ』など、新鮮な表現力を発揮した秀作が審査の最後まで残った。演劇の世界ではすでにベテランである鄭義信監督の『焼肉ドラゴン』は受賞こそ逃したものの、キャスティングが素晴らしく、映画の王道を行くような力強い作品だった。ドキュメンタリー映画 では、遠藤協氏と大澤未来氏の共同監督による『廻り神楽』と戸田ひかる監督の『愛と法』が注目作として審査員の評価を得た。個人的には、塚原あゆ子監督の『コーヒーが冷めないうちに』は気になる作品だった。

メジャーの製作・配給環境の中で、自らのこだわりを残しつつエンタテインメント作品に仕上げた力量と、また女性監督らしい柔らかな映像の感触もよかった。 金賞を受賞した野尻克己監督の『鈴木家の嘘』と、銀賞の関根光才監督の『生きてるだけで、愛。』は、2作とも初監督作品とは思えない演出とキャスティングのうまさが光る作品だった。作品は完成した時点ではなく、多くの人に見られることで人々の言の葉に触れて、優れた作品に成長する。この2作品は、もっともっと多くの人に見てほしい、また見られるべき映画作品だ。

根監督は、今年もう1作『太陽の塔』というドキュメンタリー映画も公開 している。また、『生きてるだけで、愛。』で主演を務めた趣里は、個人的には今年の主演女優賞の候補だと思う。最後に、まだまだ女性監督の活躍の場とチャンスが限られているように感じる。撮影現場ではかなり女性スタッフの比率が増しているにも関わらず、女性監督の登場が少ないのは、目に見えないハードルが映画業界にも存在しているのではないか。 この新藤兼人賞でも、今後女性監督の登場を促すような方策を期待したい。

プロデューサー賞

市橋浩治

プロデューサー

Kouji ICHIHASHI

『カメラを止めるな!』

受賞者コメント

本日はプロデューサー賞をいただきまして誠にありがと うございます。ご紹介いただきました通り『カメラを止めるな!』はENBUゼミナールのワークショップから生まれた映画です。当初は6日間のイベント上映だけで終わる予定でしたが、評判がよくて6月23日から新宿、池袋の2館から始まって、最終340館を超える映画館で興行いただいております。数字は先ほどご紹介いただいたような数字ではございますが、ひとえに我々だけの力ではなくて、アスミック・エースの豊島さんはじめ配給会社、宣伝の方、劇場の皆様などの努力や応援のおかげでここまで来れたと思っていす。
私自身は、映画のプロデューサーというよりは、この映画を作るための場を作るプロデューサーかなと思っていますが、映画製作については上田監督が中心となって、キャスト、スタッフ全員の力で出来上がったものだと思っています。この映画を作ったもともとの理由に、新人監督の上田君と これから世に出たいという役者の皆さんと一緒に映画を作って、業界の方々に知っていただきたいというのがありましたので、皆さんには本日来場しているキャストとも色々お話をしていただけるとありがたいと思っております。この映画は、観ていただいたお客様のSNSはじめ、試写や劇場で御覧いただいた業界の皆さん、監督、俳優、タレントの皆さんからの沢山の応援コメントいただき、これは全て無償でいただいているもので、そう いった皆さんからの応援があったからこそ拡がったと思っております。受賞に感謝しております。どうもありがとうございました。

Shinichiro UEDA

上田慎一郎

監督・脚本・編集

『カメラを止めるな!』

受賞者コメント

この賞を最初いただいたときに、プロデューサー賞ということに、えっと思ったのですが、プロデューサー賞の規定に「作品に貢献した人、もしくはプロデュースしたといえる企画者」とあるのをみて気持ちが落ち着きました。僕は、24の頃から本格的に映画制作をはじめ、10年間にわたり、インディース映画、自主映画を作ってきました。自主映画というのは殆ど監督がプロデューサーを兼ねているようなもので、予算は自分のポケットマネーを切り崩して、自らスケジュール管理をして、スタッフィングしてという風に作ってきました。時々、ぽっと出の新人とかシンデレラストーリーとか書かれることがありますが、そうシンデレラでもないよ?という気持ちはあります。10年間はほんとにひたすら信じて映画を作ってきたので、その10年があっての今日だと思っています。今回の『カメラを止めるな!』に関しては、作品そのものだけでなく、作品の成り立ちや、その後の展開などの現象ひっくるめて評価いただいたのかなと思っています。宣伝も、宣伝部がなかったため、キャストスタ ッフ総出で、ビラ配りをしてSNSでの発信等続けてきました。大げさにいうと、宣伝もエンタテイメントで、もっというと、作品の一部だ思っています。作品を作る人と作品を届ける人の間に距離がある、ちょっとうまくいかないことが多くなりますが、今回は、作る側と届ける側がゼロ距離でした。 同じ人たちがやっていました。ただ単に宣伝をするだけじゃなく、60日前からスタッフキャスト総勢60人で公開前カウントダウンのようなことをやり、公開から100日以上一日もかかさず舞台挨拶を行いました。それも、写真とか動画、全員撮影OKにしてSNSで発信をしてくださいと。大きな映画とやはりできないことだと思います。TOHOシネマズさんで拡大公開が決まった8月3日は、本当にワンシーンしか出てない俳優も一緒に16から17人舞台挨拶に立たせていただきました。こういうことはなかなかないと思います。
そういう「カメ止め」らしい宣伝をやっていこうということで、作り手側と届ける側の距離が なくやれたこ とが成功と して大きかったのかなと思います。先ほど市橋さんも言ってましたが、作ったのは僕たちですけども、観てくれた方が一緒になって応援してくれたというのも本当に 大きいので、この賞をスタッフ、キャスト 、そしてファンの皆様と一緒に受け取りたいと思います。ありがとうございました。

豊島雅郎

アスミック・エース共同配給

Masao TESHIMA

『カメラを止めるな!』

ENBUゼミナールと

受賞者コメント

本当に光栄な賞をいただきありがとうございます。本日この賞をいただけましたのは、まずはここにおりますプロデューサーの市橋さん、上田監督、そして今日来ていただいているスタッフ、キャストの皆さん、そして先ほどから話に出ていますTOHOシネマズさんも来ていらっしゃいますが、興行の皆さん、そして、とにかく今までできなかったことをやろうということで、一緒にやってくれたアスミック・エースのスタッフのみんな、そして、関係者、ファンの方々、そしてその熱量に心動かされて人から人に伝えてくださったこの映画のファンの皆さんにほんと感謝したいなと思っております。この映画に関わらせていただいて7月から 8月、飲み屋で隣の人がこの映画がいかに面白いかという話をしていたことが3回くらいありました。宣伝文句のように「中身は言えないんだ!でも、絶対に観にいって!」という熱い語らいを直に目撃して「ああ、流行っていくっていうのはこういうことなんだなぁ」と身をもって実感させていただきました。
市橋さん、上田さんから 、最初5千人を目標に2館で始めたと聞いておりましたが、それが223万人に届けられた、それが実際に起こりうるということが実証されただけでも本当に良かったと思っています。今日ここにいる皆さんは、インディペンデント映画を扱っているプロデューサーやその関係者が多いと思いますが、皆さんと共に私自身もまたこ ういったことで世の中を揺さぶることができればと思っていますし、 また、ここにいる皆さんとこれからの作品で ご一緒できればと思っており ます。 (キャストの曽我さんに舞台挨拶の回数について質問。曽我さんから、初日の6月2 3日から 劇場に通った回数でいう と135日間という返答があり )曽我さんのように劇場に135回通って舞台挨拶に参加されたという、舞台挨拶の回数はもっとだと思いますけど、お金ではなく、その熱量が映画をヒットさせる原動力になったとわかり ましたし、ここにいる皆様にもご理解いただけたのではないかと思います。ぜひ、これから面白い映画を沢山作って、映画産業が日 本のエンタテイメントの中核になるように、皆さんとまた一緒に活動していければと思っております。本日はどうも ありがとうご
いまた。

『カメラを止めるな!』

2017年6月23日公開

監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演:濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 長屋和彰 細井学 市原洋 山﨑俊太郎 大沢真一郎 竹原芳子 浅森咲希奈 
吉田美紀 合田純奈 秋山ゆずき撮影:曽根剛/録音:古茂田耕吉/助監督:中泉裕矢/特殊造形・メイク:下畑和秀/ヘアメイク:平林純子/制作:吉田幸之助

主題歌「Keep Rolling」/歌:謙遜ラヴァーズ feat. 山本真由美/音楽:鈴木伸宏&伊藤翔磨 永井カイル

アソシエイトプロデューサー:児玉健太郎、牟田浩二 /プロデューサー:市橋浩治
製作:ENBU ゼミナール/ 配給:アスミック・エース=ENBU ゼミナール

海外タイトル「ONE CUT OF THE DEAD」

[2017/96 分/16:9]©︎ENBUゼミナール

監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》第7弾作品。オーディションで選出された無名の俳優達、他に類を見ない構造と緻密な脚本、30分以上に及ぶ長回しなど、さまざまな挑戦に満ちた野心作。2017年11月に、《シネマプロジェクト》第7弾作品のイベント上映が開催されるとレイトショーにも関わらず連日午前中にチケットがソールドアウト。18年6月に都内2館での単独劇場上映が始まると連日満席、口コミで評判が広がり、同年8月からアスミック・エースが共同配給につき全国で拡大公開。上映館数累計300館以上、観客動員数200万人を突破する大ヒットとなった。とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき......。”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”......を撮ったヤツらの話。

【ストーリー】

【プロデューサー賞選考委員会】

協会加盟社から推薦を募り、理事で構成される選考委員会で、討議を重ね、受賞者を決定。

プロデューサー賞 講評

日本映画製作者協会 理事

岡田 裕(アルゴ・ピクチャーズ)

今年の日本映画界の最大の話題は「カメラを止めるな!」の興行的成功であった。製作費300万円で作られ、上映館が2館から30以上のスクリーンに拡大され、30億円を超す興行収入を上げ今も全国で上映中である。このことは50年に一度の映画界の快事である。何故このような現象が実現したのか。当然のことながら、作品自体が優れているという事。映画の基本設計図となる脚本が実に緻密に構成され、その中で登場人物たちの際立つキャラが短いセリフの中に巧みに表現されている。そしてその設計図をスピード感を持って映像化した演出に感動させられた。この大成功は、どのようなプロデユース力に導かれて実現したのか。私たち日映協は上記3人の方をこの映画のプロデユーサーとして表彰することにした。ENBUゼミナールの市橋氏はワークショップで俳優を養成しながら300万円で映画を作る仕組みを考え、脚本・監督の上田氏はその仕組みにのっとり予算からスケジュールまで自ら管理し、アスミック・エースの豊島氏は、まだ2館の封切の時からこの映画の興行性を先取りしてメジャーの300スクリーン以上に拡大上映させた。御三人のプロの映画人としての眼力が奇跡的に重なり合っての成功だと思う。そして彼らを支えた何十人という若いスタッフキャストの真摯な努力が画面からにじみ出ているのも成功の背景にある。皆さん、おめでとう。

​日本映画製作者協会 特別賞

KUROSAWA Mitsuru

黒澤 満

株式会社セントラル・アーツ取締役社長。
1933年生まれ。1955年日活入社。新宿日活営業係を経て1958年に

梅田日活の支配人に抜擢される。1963年、名古屋日活の支配人として異動するが、 再び梅田日活の支配人に復帰。1969年、日活関西支社宣伝課長となる。1970年、俳優部次長として製作の現場に呼ばれ、その後映像本部長室長に就く。1971年、日活がロマンポルノ路線へと転換して以降、その企画製作の中核として多くのロマンポルノ作品を プロデュースする。1972年に企画製作部長、

1973年に撮影所長に就任。1977年、日活を退社した後、同年に東映が新たに立ち上げた東映セントラルフィルム (のちにセントラル・アーツ)のトップに招聘され、翌年公開の第1回作品『最も危険な遊戯』が話題となる。娯楽性に満ちたプロデュース作品は200本以上に及び、2018年は『終わったひと』が公開された。2007年、文化庁映画賞映画功労部門で受賞。

2012年、毎日映画コンクール特別賞受賞。

協同組合日本映画製作者協会・特別賞 について

1996年から始まりました「新藤兼人賞」も本年で23回目を迎えます。本来は、その年の優れた新人監督に贈られる「金賞」「銀賞」、また、その年の優秀な作品の完成に貢献を果たした映画製作者に「プロデューサー賞」が贈られるのですが、本年は特別に〈協同組合日本映画製作者協会・特別賞〉を設け、株式会社セントラル・アーツの黒澤満氏に贈呈することとなりました。 黒澤氏は1955年、日活に入社。1977年に日活を退社後、セントラル・アーツを設立されました。 『最も危険な遊戯』から始まる「遊戯シリーズ」や、『野獣死すべし』、テレビドラマ『探偵物語』など一連の松田優作作品、『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ、 『あぶない刑事』シリーズ、角川映画、テレビドラマ、「東映Vシネマ」など多数製作し、その作品群は枚挙に暇が有りません。黒澤氏は穏やかで人望も厚かったことから、セントラル・アーツから育った映画スタッフも数知れません。今日に至る日本映画界の激流を“柔らかな剛腕”で乗り越えてこられた業績を讃え、敬意を表 して〈協同組合日本映画製作者協会・特別賞〉を贈ります。

日本映画製作者協会 理事 

桝井省志(アルタミラピクチャーズ)

坂本忠久(コンティニュー)

【審議された作品】

2018年新藤兼人賞金賞・銀賞の選考対象となった185本の中から審査員会にて選出

鄭義信『焼肉ドラゴン』、上田慎一郎『カメラを止めるな!』、関根光才『生きてるだけで、愛。』、野尻克己『鈴木家の嘘』

岩切一空『聖なるもの』、山中瑶子『あみこ』

〈最終候補作品〉

〈2次選考通過作品〉

遠藤協・大澤未来『廻り神楽』、小田学『サイモン&タダタカシ』、湯浅弘章『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、

塚原あゆ子『コーヒーが冷めないうちに』、戸田ひかる『愛と法』、大野大輔『ウルフなシッシー』、宅間孝行『あいあい傘』

〈1次選考通過作品〉

二ノ宮隆太郎『枝葉のこと』、今野恭成『心魔師』、春本雄二郎『かぞくへ』、谷本香織『花は咲くか』、小島淳二『形のない骨』

山本剛義『家族のはなし』、藤村明世『見栄を張る』、斎藤工『Blank13』、関根光才『太陽の塔』、長谷川康夫『あの頃、君を追いかけた』

山下智彦『三屋清左衛門残日録』『三屋清左衛門残日録 完結篇』、武井祐吏『赤色彗星倶楽部』、伊藤峻太『ユートピア』

渡辺智史『おだやかな革命』、かなた狼『ニワトリ★スター』、宮崎大祐『大和(カリフォルニア)』、波多野貴文『オズランド』

藤村享平『パパはわるものチャンピオン』、小野さやか『恋とボルバキア』、清原惟『わたしたちの家』、木村文洋『息衝く』

主 催

協同組合 日本映画製作者協会
 

特 別 協 賛

東京テアトル株式会社
 

協 賛

松竹株式会社/東宝株式会社/東映株式会社/株式会社KADOKAWA

日活株式会社/日本映画放送株式会社/株式会社WOWOW

株式会社IMAGICA/株式会社ファンテック

後 援

​文化庁

 

過去受賞結果

 年 度

金  賞

銀  賞

プロデューサー賞受賞者

中野量太  『湯を沸かすほどの熱い愛』

小路紘史    『ケンとカズ』

岨手由貴子 『グッド・ストライプス』

松永大司    『トイレのピエタ』

進藤淳一

天野真弓       PFFスカラシッププロデューサー

久保田直  『家路』

原桂之介    『小川町セレナーデ』

成田尚哉   『海を感じる時』

(若手監督育成に対して)

白石和彌  『凶悪』

奥谷洋一郎   『ソレイユのこどもたち』   

孫家邦     『舟を編む』

菊地美世志

蜷川実花    『ヘルタースケルター』

『BRAVE HEARTS 海猿』

赤堀雅秋  『その夜の侍 』

亀山千広     『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

『テルマエ・ロマエ』 

『ロボジー』

『終の信託』

『ライアーゲーム -再生-』

『任侠ヘルパー』

『JAPAN IN A DAY(ジャパン イン ア デイ)

塙幸成   『死にゆく妻との旅路 』

近藤明男      『エクレール・お菓子放浪記』

新藤次郎   『一枚のハガキ』 

2010

呉美保   『オカンの嫁入り』

吉田恵輔      『さんかく』

桂壮三郎   『アンダンテ~稲の旋律~』

若松孝二   『キャタピラー』

2009

沖田修一  『南極料理人』

田口トモロヲ『色即ぜねれいしょん』

安田匡裕    『ディア・ドクター』

2008

小林聖太郎 『かぞくのひけつ』

森義隆   『ひゃくはち』

中沢敏明   『おくりびと』

本木雅弘

2007

佐藤祐市  『キサラギ 』

中村義洋    『アヒルと鴨のコインロッカー』

桝井省志   『それでもボクはやってない』

2006

マキノ雅彦 『寝ずの番』 

荻上直子  『かもめ食堂』 

渡辺謙   『明日の記憶』

2005

宮藤官九郎 『真夜中の弥次さん喜多さん』

内田けんじ 『運命じゃない人』

李鳳宇    『パッチギ!』 

2004

土井裕泰  『いま、会いにゆきます』

佐々部清  『チルソクの夏』『半落ち』

2003

李相日   『BORDER LINE』

竹下昌男   『ジャンプ』 

2002

橋口亮輔  『ハッシュ!』

西川美和      『蛇イチゴ』 

2001

新藤風   『LOVE/JUICE』

北村龍平      『VERSUS』 

2000

中江裕司  『ナビィの恋』

合津直枝      『落下する夕方』 

1999年

けんもち聡 『いつものように』

1998年

荒井晴彦  『身も心も』

1997年

松井久子  『ユキエ』

是枝裕和  『幻の光』  

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