




《新藤兼人賞》
日本映画の独立プロによって組織される日本映画製作者協会に所属する現役プロデューサーが
その年度で最も優れた新人監督を選びます。完成度や将来性のみならず、
「この監督と組んで仕事をしてみたい」 「今後この監督に映画を作らせてみたい」
というプロデューサーの観点を含む日本で唯一の新人監督賞です。
本年29年目を迎える本賞は「新人監督たちを発掘、評価し、
今後の日本映画界を背負ってゆく人材を育てたい」というプロデューサー達の思いから1996年に
「最優秀新人監督賞」として始まり、2000年より“日本のインディペンデント映画の先駆者”である
新藤兼人監督の名前をいただき現在の名称となりました。
受賞者には新藤監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として
金賞には賞金50万円並びにUDCast賞※、銀賞には25万円を贈呈いたします。
(2024年度は215作品が選考対象となりました)
※ UDCast賞:Palabra株式会社より、金賞受賞作のバリアフリー版制作及びUDCastを提供。
受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。
《プロデューサー賞》
“優秀な作品の完成に貢献を果たしたプロデューサーや企画者″の功績を称えることで
映画製作者への刺激を与え、日本映画界の活性化に繋げたいという願いから
2005年に創設されたプロデューサー賞は本年20回目を迎えます。
受賞者には、正賞のクリスタルトロフィーと、副賞として賞金50万円を贈呈します。
対象作品選考規定
【金賞・銀賞】
・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)
・監督がデビュー(劇場公開長編実写映画)から3作品目以内であること
(アニメ、及びオムニバス作品の一編は作品数にカウントしない)
※公開とは有料で劇場及びホールで1週間以上有料上映された事を意味する。
※オムニバス映画の一編を監督した場合は作品数に含まない。
※アニメーションは作品数に含まない。
【プロデューサー賞】
・前年12月〜本年11月公開の劇場用実写長編映画(60分以上)
2024年度
審査委員会
【金賞・銀賞】
協会所属の現役プロデューサーで構成される審査委員会にて討議を重ね、金賞、銀賞の受賞者を決定。
審査委員長

永井 拓郎
NAGAI Takuro
RIKIプロジェクト
1977年石川県生まれ。キャスティングアシスタント、俳優のマネージメントを経て、2004年RIKIプロジェクト参画、2016年代表取締役就任。主なプロデュース作品は『ひゃくはち』(’08/森義隆監督)、『ぼくたちの家族』(’14/石井裕也監督)、『聖の青春』(’16/森義隆監督)、『ある船頭の話』(’19/オダギリジョー監督)、『生きちゃった』(’20/石井裕也監督)、『私をくいとめて』(’20/大九明子)、『茜色に焼かれる』(’21/石井裕也監督)、『死刑にいたる病』(’22/白石和彌監督)、『川っぺりムコリッタ』(’22/荻上直子監督)、『月』(’23/石井裕也監督)、『愛にイナズマ』(’23/石井裕也監督)等。現在、『本心』(石井裕也監督)が公開中。
審査委員

関 友彦
SEKI Tomohiko
コギトワークス
学生時代イギリスで自主短編映画を制作したことをきっかけに、2000年帰国後フリーランスの制作として多くの邦画や合作映画の現場に参加。08年コギトワークスを設立。
主な制作部作品に、TVドラマ「私立探偵濱マイク」(02/NTV)、『KILL BILL』(02/Quentin Tarantino監督)、『Lost in Translation』(02/Sofia Coppola監督)、『海猿』(04/羽住英一郎監督)、『いつか読書する日』(04/緒方明監督)、『蟲師』(06/大友克洋監督)、『INCEPTION』(10/Cristopher Nolan監督)など多数。
主なプロデュース作品に、『めがね』(07/荻上直子監督)、『クローンは故郷をめざす』(09/中嶋莞爾監督)、「ネオ・ウルトラQ」(13/WOWOW)、『人数の町』(20/荒木伸二監督)、『逃げきれた夢』(23/二ノ宮隆太郎監督)、『あんのこと』(24/入江悠監督)、『箱男』(24/石井岳龍監督)などがある。

深瀬 和美
FUKASE Kazumi
クロックワークス
1998年株式会社ロックウェルアイズに入社。以降映画宣伝会社を経て2002年に株式会社クロックワークスに入社。宣伝プロデューサーとして洋画・邦画の宣伝に携わりながら2007年『アフタースクール』で初めてアソシエイトプロデューサーとして制作に参加。『鍵泥棒のメソッド』(16年)でプロデューサーデビュー。以降、新人監督のオリジナル脚本作品を中心に、宣伝的な視点を大切にしながら、『夏の終り』(13年/熊切和喜監督)、『先生と迷い猫』(15年/深川栄洋監督)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年/中野量太監督)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年/白石和彌監督)、『ねことじいちゃん』(19年/岩合光昭監督)、『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』(19年/小林聖太郎監督)、『決戦は日曜日』(22年/坂下雄一郎監督)において制作と宣伝のプロデューサーを務めている。その他のプロデュース作品に『死刑にいたる病』(22年/白石和彌監督)、『悪い夏』(25年公開予定/城定秀夫監督)がある。

三 宅 はるえ
MIYAKE Harue
ブースタープロジェクト
K2 Pictures
『LOVE MY LIFE』(06年/川野浩司監督)以降映画プロデュースを手掛ける。主なフィルモグラフィに『イン・ザ・ヒーロー』('14/武正晴監督)、『最後の命』('14/松本准平監督)、『at Homeアットホーム』('15/蝶野博監督)、『世界は今日から君のもの』('17/尾崎将也監督)、『KOKORO』('17/ヴァンニャ・ダルカンタラ監督)、『あの日のオルガン』('19/平松恵美子監督)、『王様になれ』('19/オクイシュージ監督)、『閉鎖病棟-それぞれの朝-』('19/平山秀幸監督)、『アイヌモシリ』('20/福永壮志監督)、『樹海村』('21/清水崇監督)、『ホムンクルス』('21/清水崇監督)、『牛首村』('22/清水崇監督)、『世界の終わりから』('23/紀里谷和明監督)、『山女』(’23/福永壮志監督)NETFLIX「地面師たち」(’24/大根仁監督)などがある。

吉村 知己
YOSHIMURA Tomomi
ヨアケ
1998年に新卒で株式会社ギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ株式会社)に入社し宣伝部に配属。2005年宣伝部長に就任。2009年に独立し株式会社ヨアケを設立。『日日是好日』(’18/大森立嗣監督)、『星の子』(’20/大森立嗣監督)で企画プロデュースと宣伝プロデューサーの双方を担う。その他の企画プロデュース作品に『都会のトム&ソーヤ』(’21/河合勇人監督)、『湖の女たち』(’24/大森立嗣監督)など。宣伝プロデューサー担当作品に『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(’10)、『まほろ駅前多田便利軒』(’11)、『新宿スワン』(’15)、『空母いぶき』(’19)など。
【プロデューサー賞】
協会加盟社からの推薦を募り、理事で構成される選考委員会にて受賞者を決定。
第29回 授賞式
日時: 2024年 12月 6日(金) 12:00〜14:00
(授賞式 12:00 ~ 12:30 祝賀パーティー12:30 ~14:00)
会場:如水会館 2Fスターホール
(千代田区一ツ橋 2-1-1 tel:03-3261-1101)
主催:協同組合 日本映画製作者協会
特別協賛:東京テアトル株式会社
協賛:
松竹株式会社 東宝株式会社 東映株式会社 株式会社KADOKAWA 日活株式会社
日本映画放送株式会社 株式会社WOWOW 株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス 株式会社ファンテック Palabra株式会社 日本テレビ放送網株式会社
株式会社テレビ朝日 株式会社TBSテレビ 株式会社テレビ東京 株式会社フジテレビジョン
株式会社U-NEXT Netflix
後援:文化庁
2024年度
最終選考監督/作品
選考対象215作品の中から12名(12作品)が最終選考監督に選ばれました。
受賞者は11月26日に発表いたします。
(敬称略/劇場公開順)
竹岡寛俊 『アダミアニ 祈りの谷』
マヒトゥ・ザ・ピーポー 『i ai』
蘇 鈺淳 『走れない人の走り方』
木寺一孝 『正義の行方』
松本佳樹 『地球星人(エイリアン)は空想する』
飯島将史 『プロミスト・ランド』
安田淳一 『侍タイムスリッパー』
山城達郎 『心平、』
山中瑶子 『ナミビアの砂漠』
奥山大史 『ぼくのお日さま』
道本咲希 『ほなまた明日』
空音央 『HAPPYEND』
以上、監督12名が最終選考に選ばれました。
今年度はこの12名の監督にNetflixへの企画・提案の機会が付与されます。
詳細は授賞式当日に発表致します。
受賞者には、正賞として故・新藤兼人監督デザインのオリジナルトロフィーと、副賞として、
金賞には賞金50万円ならびにUDCast賞(※1)、銀賞には賞金25万円を贈呈します。
※1 UDCast賞:Palabra株式会社より、
金賞受賞作のバリアフリー版制作及びUDCastを提供。
受賞作がバリアフリー化されている場合は、金賞受賞監督の次回作に提供。

2024年度
新藤兼人賞 金賞
山中 瑶子
YOKO YAMANAKA
『ナミビアの砂漠』 監督/脚本
1997年生まれ、長野県出身。19歳で撮影・初監督した『あみこ』(17年)が PFFアワード2017で観客賞を受賞。
同作品は18年に第68回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に史上最年少で招待されたほか、香港国際映画祭やカナダのファンタジア映画祭など、各国の映画祭で上映され、話題を呼んだ。『ナミビアの砂漠』(24年)にて第77回カンヌ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞を女性監督として最年少での受賞を果たす。

【コメント】
山中瑶子です。こんにちは。
とても光栄に、うれしく思います。プロデューサーが選ぶ賞ということで、もちろん、スタッフたちと関わってくださった皆様に心から感謝をするとともに、今日はちょっとプロデューサーに感謝してみようと思います。
結構いつも、今までお世話になったり、私が逃げたりして、どうなってるか分からないなというプロデューサーの顔もチラッとは見えるんですけども。
『ナミビアの砂漠』は、もともとブリッジヘッドの小川真司プロデューサー、〈(会場を見回して)いらっしゃいますか?あ、いた!〉と別の原作小説の映画化をまずスタートさせていたんですけど、私がいつもどおり、「ちょっと、これはできません」「降りたいです」と申したときに、かなり小川さんにも迷惑かけましたし、やきもきしたと思うんですけど、そのときはハピネットファントム・フィルム(ファントム・フィルム、※ハピネットファントム・スタジオ)の小西(啓介)さん、〈(会場内をみて)小西さん、いらっしゃいますか?あ、いた!〉「オリジナルで河合優実さん主演のまま、好きに書いてみればどうですか?」ということを言っていただいて、そんなことって本当に、ふだん、ありえないと思うんですけど。急に、その判断が本当にすごいですけど、でも、そのときは「全投げされているな」とも思ったというか、今はとってもよかったんですけど。もう本当に、すごかったですね。
そのあと、コギトワークスさんに制作会社が決まりまして、私が、本当は脚本が書けないので、いっぱい脚本書いてる人に分かると、そんな名前をこう、こうした賞をもらうっていうのはふさわしくないんじゃないかっていうぐらい脚本が書けないんですけど。でも、コギトワークスにある脚本執筆部屋に毎日通いまして、コギトのプロデューサーの山田真史さんが、日々、見守ってくれてというか。人を見張るっていうことは、普通だったらすごくストレスになることだと思うんですけど、山田さんは本当にすばらしいというか、山田さんがいてくれるおかげでリラックスして書けるっていう状況があって。困ったときには相談にも乗ってくれて、感謝しています。
もう1人、コギトの鈴木徳至プロデューサーは〈どこですか?(会場内、見つけて手を振る)〉、本当に、私がどういう人間かっていうことをよく見てくださって、本当にすばらしいスタッフィングをしてくれた。ほかにもいっぱい相談に乗ってもらって。「みんなで一丸となって映画を作る」みたいなことがあまり好きじゃないんですけど、一丸とならなくても、バラバラで居ても、同じものを真摯に作れるんだっていう、豊かなスタッフを集めてくださって本当に感謝しています。カメラマンの米倉(伸)さんも来ていただいて、もうずっと、ありがとうございます。
新藤兼人さんは、戦争を絶対に許さず、人間とは一体どういう存在なのかということをすごく考え続けて、たくさん映画を撮り続けていた方だと思うんですけど、私にはまだまだそんな気概が足りないので、もっと精進して頑張りたいと思います。
ありがとうございました。
〈取材写真撮影の前にもう一度、マイクを取って〉
すいません、さっきご挨拶で忘れちゃって、Palabraさん、ありがとうございます。ナミビアで一緒に作った時とても楽しかったので、またご一緒出来るの楽しみです。ありがとうございます。
『ナミビアの砂漠』
劇場公開日:2024年9月6日
監督・脚本:山中瑶子
製作:小西啓介、崔相基、前信介、國實瑞惠
プロデューサー :小西啓介、小川真司、山田真史、鈴木徳至
撮影:米倉伸 美術:小林蘭 装飾:前田陽 音楽:渡邊琢磨 録音:小畑智寛
リレコーディングミキサー:野村みき 照明 :秋山恵二郎 編集:長瀬万里
スタイリスト:髙山エリ ヘアメイク:河本花葉 協力プロデューサー:後藤哲
制作主任:宮司侑佑 助監督:平波亘
出演:河合優実、金子大地、寛一郎、新谷ゆづみ、中島歩、唐田えりか、渋谷采郁、澁谷麻美、倉田萌衣、伊島空、堀部圭亮、渡辺真起子
製作:『ナミビアの砂漠』製作委員会
(企画製作:ハピネットファントム・スタジオ/制作プロダクション:ブリッジヘッド、コギトワークス)
企画製作・配給 :ハピネットファントム・スタジオ
〔2024年/日本/137分/カラ-/スタンダード(1:1.37)/5.1ch〕©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・?
監督は19歳という若さで『あみこ』を作り上げ、史上最年少でのベルリン国際映画祭出品を果たした若き天才・山中瑶子。主演はその『あみこ』を観て衝撃を受け、監督に「いつか監督の作品に出演したいです」と直接伝えに行ったという、河合優実。才能あふれる2人の夢のタッグが実現した本作は、今年のカンヌ国際映画祭 監督週間でも絶賛され、国際映画批評家連盟賞を受賞。カンヌでのワールドプレミア、上海国際映画祭でのアジアプレミアを経て、日本での公開を迎えると、満席回が続出するなど大きな熱狂を巻き起こした。11月13日にはフランスでも公開され、その後アメリカ、カナダ、台湾、韓国など海外での上映も予定されており、“ナミビア旋風”は、海を越えて広がっていく !



2024年 度
新藤兼人賞 銀賞
安田 淳一
JUNICHI YASUDA
『侍タイムスリッパー』
監督/脚本/撮影/照明/編集/タイトルCG/現代衣装/車両/制作

1967年京都生まれ。大学卒業後、様々な仕事を経てビデオ撮影業を開始。幼稚園の発表会からブライダル撮影、企業用ビデオ、イベントなど幅広い分野で、演出、セットデザイン、マルチカム収録・中継などをこなす。2023年、父親の逝去により実家の米作り農家を継ぐも、多すぎる田んぼ、慣れない稲作に時間を取られ映像制作業もままならず、安すぎる米価に赤字にあえぐひっ迫した状況。「映画がヒットしなければ米作りが続けられない」と涙目で崖っぷちの心境を語る。
2014年、『拳銃と目玉焼』が公開。Huluでも配信されレイティング4.0を獲得。2017年には『ごはん』がシネコン全国5都市やミニシアターにて公開された後、各地で様々な上映イベントが行われ、38カ月も続くロングラン作品となる。
2024年8月17日、インディーズ映画の聖地“池袋シネマ・ロサ”1館のみで公開された『侍タイムスリッパー』が大ヒット。話題が話題を呼び、2024ユーキャン新語・流行語大賞にもノミネート。2024年11月27日段階で動員54万人突破、延べ上映劇場数340館以上となる一大ブームとなっている。
【コメント】
どうも、本日はこのような賞をいただきまして、本当にうれしく思っています。
お立ちになってる皆さん、立ちくらみだけにはお気をつけて、無理せずに聞いてください。
まずもってですね、新藤兼人さんと言えばですね、私ども自主映画の大先輩のお名前を冠したこのような賞をいただいたことをうれしく思っております。
この作品は、取っかかりがですね、京都撮影所の皆さん、それから、初めてこの映画を掛けていただけるって言ってくれたミニシアターの皆さん、そして、大きく取り上げてくださったシネコンの皆さん、そしてギャガの皆さん、それと何よりもお客様、そういった皆さんの、映画に関わる皆さんの心意気と助けによって、ここまで来れたと思っております。
今、選考時、すったもんだと聞きましてですね、さもありなんと思ってまして、よくこのような、監督が11役以上兼ねる、自主映画丸出しの作品をですね、ベタベタの作品を、銀賞に選んでいただいたことに感謝しつつ、結構リスクのある危ない橋を渡られたなと思っております。
思えば、言いたいことはいっぱいあるんですけれども、すばらしい作品を作られた山中監督、そして、『あんのこと』制作そしてプロデューサーの皆さん、そして、僕は57歳ですけども、まだまだ前途のある映像作家の皆さんと、この場にいれることを本当に幸せに思っております。
僕は、大人から子どもまでと言いますか、具体的に言うと小学校5年生以上、90歳ぐらいまでの皆さんが、映画を観て、笑って、楽しんで、「さぁ明日も頑張っていこう」と思えるような映画を、費用対効果をきちっと把握しながらですね、作っていきたいと思ってますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。
本当に今日はありがとうございました。
『侍タイムスリッパー』
劇場公開日:2024年8月17日
監督・脚本・撮影・照明・編集・タイトルCG・現代衣装・車両・制作:安田淳一
制作:清水正子、沙倉ゆうの
音声:岩瀬航 、江原三郎 、松野泉
照明:土居欣也 、はのひろし
時代衣装:古賀博隆 、片山郁江
床山:川田政史
助監督:高垣博也 、沙倉ゆうの
特効:前田智広、佃光、上野尊貴
殺陣:清家一斗
美術協力:辻野大 、田宮美咲 、岡崎眞理、沙倉ゆうの
出演:山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴、井上肇、田村ツトム、安藤彰則、庄野﨑謙
製作会社:未来映画社(撮影協力:東映京都撮影所)
配給:ギャガ、未来映画社
〔2023年/日本/131分/カラー/アメリカンビスタ(1:1.85)/ステレオ〕 ©2024未来映画社
現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の斬られ役として第二の人生を生きていく姿を描いた時代劇コメディ。
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気絶してしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。江戸幕府が140年前に滅んだことを知り、がく然とする新左衛門。心優しい人たちに助けられ、やがて剣の腕を頼りに、斬られ役として生きていくことを決意する。


《 2024年度
新藤兼人賞 金賞・銀賞 審査講評 》
〈 総評 〉
審査委員長 永井拓郎(RIKIプロジェクト)
本年度は昨年度からさらに作品数が15本増え、215本の新人監督作品が劇場上映されました。
手作りの作品からメジャー作品まで多様な作品が上映され、そして国際映画祭でも高い評価を得て、今後の日本映画界を背負っていく素晴らしい才能の誕生を感じる年でした。
また215本中、68本がドキュメンタリーで、今の日本が孕んでいる空気を感じることのできる秀作が多かったです。
金賞、銀賞の選考は『正義の行方』『侍タイムスリッパー』『ナミビアの砂漠』『HAPPYEND』の4作に絞られました。金賞は満場一致で『ナミビアの砂漠』、銀賞は長時間の議論の末『侍タイムスリッパー』を選出させていただきました。
金賞の『ナミビアの砂漠』は映画表現の自由さを最大限の武器に、今年最も輝いている俳優のひとりである河合優実さんを主演に迎え、まさに今年を代表する一本でした。山中瑶子監督の作家性が爆発しており、心動かされる瞬間がいくつもありました。枠にはまらない作品を今後も生み出していただきたいと切に願います。
銀賞の『侍タイムスリッパー』は安田淳一監督が実情はプロデューサーも担われております。監督とプロデューサーの映画そして時代劇への愛情が観ている側の心にストレートに届き、とても良質なエンターテイメントとして世に放たれた傑作です。大いに笑って、泣きました。興行の成功や話題性を抜きにしても『ナミビアの砂漠』と対になる今年を代表する一本でした。
『正義の行方』木寺一孝監督は、NHKで数多くの演出をされており新人監督とお呼びするには他の監督とのキャリアの差は歴然ですが、最後の最後まで銀賞に選出するかどうか議論を交わしました。権力側の証言を得ることの意義と共に30年経ないと前に進めないこの国の感性が露わにされ痺れました。
『HAPPYEND』は今年の対象作品の中で、一番の衝撃を受けました。公開時33歳の空音央監督の感じている(感じてきた)社会に対する不安、不満、怒りがこれでもかと詰め込まれています。もし行動を起こさないなら同罪ではないか、という視点も含めて、作家としての態度の表明に勇気づけられました。
『ぼくのお日さま』は『ナミビアの砂漠』『HAPPYEND』とともに日本の新人監督の才能を世界に知らしめた作品でした。アイススケートリンクを自ら滑りながらカメラを回している奥山大史監督の凄みと絵画のような切り取り方は唯一無二でした。次回作もとても期待しています。
『アダミアニ 祈りの谷』は第二次チェチェン紛争が自分の記憶から消えそうになっていたことに気付かされると同時に自身の知識の無さに絶望させられました。竹岡寛俊監督は女性たちの逞しさと男の戦士の誇りを示し、同時に彼女ら彼らの背負うものの大きさも残酷に描いて、世界から紛争は終わらないことも改めて突き詰めます。素晴らしいドキュメンタリー映画でした。
マヒトゥ・ザ・ピーポー監督『i ai』は衝動と計算とが両立していて、今の時代といい意味で逆行しているエネルギーに溢れた作品でした。この先も映画を撮り続けていくのか、いち表現の手段なのか、審査員で議論となりましたが、次回作を是非撮っていただきたいです。
『ほなまた明日』道本咲希監督、『走れない人の走り方』蘇鈺淳監督は専門学校、大学院教育を受けている最中の作品で、丁寧な脚本作り、的確な感情の掬い方、大胆に見る側へ伝えること、においてしのぎを削っていた2作品でした。教育現場を離れた次回作がどうなるのか、心待ちにしています。
『地球星人は空想する』を見た第一感は他のどの作品にもないオリジナリティ。じっくり分析すると松本佳樹監督の章立て構成、物語の引っ張り方、演出、の質が高く、バランスがとても良いです。
音はかなり複雑なことをやろうとしていますが、音の構成もうまくいっている。非凡さを強く感じました。
『プロミスト・ランド』飯島将史監督、『心平、』山城達郎監督、おふたりとも助監督出身で満を持しての監督作品。それぞれ方向性は違えど映画の強度と覚悟は群を抜いていました。飯島監督、よくぞマタギのあの時間を観ている側と共有されました。賛否両論あったと思いますが、その腹の括り方に敬意を表します。山城監督は業界での育ちの良さが全面に現れており、奥野瑛太さんを筆頭に俳優が躍動しています。両監督の映画に対する誠実さがとても伝わりました。
2024年は力作揃いでした。もはや新人離れしている片山慎三監督『雨の中の慾情』、近浦啓監督『大いなる不在』、甲斐さやか監督『徒花 -ADABANA-』。ドキュメンタリー作品では奥間勝也監督『骨を掘る男』、吉川元基監督『94歳のゲイ』、平野陽三監督『僕が宇宙に行った理由』。俳優としての経験を経た40代の小林且弥監督『水平線』、結城貴史監督『DitO』。最終選考作品と甲乙つけ難い、素晴らしい作品でした。
関 友彦(コギトワークス)
まず、金賞を受賞されました山中瑶子監督、そして銀賞を受賞されました安田淳一監督、また最終選考に残られた十作の監督のみなさま、誠におめでとうございます。
さて、今回初めて審査委員をお引き受けしたわけですが、私は審査基準を「映画には優越はない。ただ、好き嫌いはある」と定めました。とはいえ、あまりに曖昧であるはずの好きと嫌いが、具体的にはどこからくるのか、それは最低限示さねばならないとも考えました。私の好きと嫌いを分かつものはなにかと自問すると、新藤兼人賞自体も掲げている「この監督とご一緒したいかどうか」という命題だと思い当たります。これもまた極めて個人的な基準かもしれません。しかし、普段からプロデューサーとして心がけている明確な問題意識でもあります。
今年の作品群を見渡すと、特にドキュメンタリー映画が多かった印象ではあります。最終選考外作品ではありますが奥間勝也監督『骨を掘る男』は、痛烈な問いから出発し、忍耐強く事象を見つめる映画でした。また最終選考ノミネートの山城達郎監督『心平、』はとても真摯に製作されていることが伝わり、ある家族の物語として心を掴まれました。他にも、是非ご一緒したいと感じる監督の作品がいくつもありました。
ふと、とある劇場の支配人が「日本は恵まれている国だ」と漏らしたことを思い出します。「毎年こんなにも多くの新人監督がデビューできる国は他にはないよ」と。時折、他国と比較し、邦画界を嘆く言葉を耳にすることがあります。しかし、私は「日本の映画界は豊かである」という意見に同意します。なにより、今回の選考を通じて鑑賞した、あまたの意欲的で躍動感あふれる新人監督作品がそれを証明しているのだと確信しました。審査員をお引き受けした、なによりの収穫だと感謝しています。
三宅 はるえ(ブースタープロジェクト)
本年度選考対象215作品から選出された最終選考作品12本の監督陣とチームの皆さまに心より敬意を表しお祝い申し上げます。
金賞の山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』は監督の尋常じゃない観察眼と細かな表現の掬い取りを終始にんまりしながら楽しみました。緻密な伏線の中そうきたかと出てくる新しい展開、言葉を紡ぐことへの監督のこだわりに応援したくなる芯の強さがありました。
銀賞の安田淳一監督『侍タイムスリッパー』には久しぶりに上映中笑いが溢れている劇場の様子に、なんて幸せな空間なんだ!と映画の理想を感じました。キャストの名前が何度もスタッフとしてもあり皆が掛け持ちで取り組んだチームと監督に拍手を送りたいです。
今年はドキュメンタリーの強さを感じる年でもありました。中でも最終選考作品に残った木寺一孝監督『正義の行方』と竹岡寛俊監督『アダミアニ 祈りの谷』の両作品は、ピックアップする題材や対象の鋭さに加え、追いかける監督の執念とともに、これを知らなくてよいのかという社会に対する痛烈な問いかけを感じさせられる作品でした。
フィクション作品では前出の『侍タイムスリッパー』に加え、空音央監督『HAPPYEND』、マヒトゥ・ザ・ピーポー監督『i ai 』、蘇 鈺淳監督『走れない人の走り方』と音楽の使い方の個性が目を惹く作品が多く、鑑賞後音楽について追っかけて復習せずにはいられませんでした。
昨年より最終選考作品の監督陣にも授賞式にご参加いただき映画関係者にご紹介できる場が増えたこと、大変嬉しく思います。また今年からスタートする最終選考の監督陣に対するNETFLIXへの企画提案制度も、映画界の才能を育てる新しいチャンスの一つとなることを願っております。
深瀬 和美(クロックワークス)
本年度より新藤兼人賞審査会に参加させていただきました。歴史ある賞の審査員を私なんかが務めて良いのかと悩みましたが、対象作品を鑑賞させていただき、新しい才能との出会いと気づきを得られたことは何物にも代えがたい経験となりました。すべての対象作品の監督の皆様、ありがとうございました。
長編作品3本目までという対象条件を満たす作品には、自主制作作品、商業作品、フィクション、ドキュメンタリーと当たり前ですが成立過程やジャンルも様々で、制作費にも大きな差があります。簡単に優越をつけることできない中で、どの作品を最終選考に残すか、何を指針に推したらいいのかとても悩みました。が、シンプルに「この方の次の作品が観たい、応援したい」という気持ちで推させていだきました。
金賞の山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』は満場一致でした。映画を通して伝えたいことが明確で、そのために何が一番有効か、既存の方法に捕らわれずに表現されていて驚かされました。大胆で繊細な演出も素晴らしかったです。銀賞の安田淳一監督の『侍タイムスリッパー』も観客を楽しませるという明確なビジョンを感じ、いち映画ファンとしてこの作品が生まれたことを嬉しく思います。
最終選考に残った作品は受賞作以外もどれも優れた作品でしたが、木寺一孝監督の『正義の行方』はその取材力はもちろんのこと、それをドキュメンタリー映画として構成する手腕に感銘を受けました。蘇 鈺淳監督の『走れない人の走り方』が描き出す世界は、突飛ではないけど唯一無二の個性があり、次回蘇監督がどんな作品を作られるのかわくわくしています。その他の作品も、どれも監督の確かな力量を感じました。皆様の今後の活躍をとても楽しみにしています。
吉村 知己(ヨアケ)
金賞『ナミビアの砂漠』。タイトルが想像を掻き立てるが舞台は“まほろユニバース”町田だ。え、今どきの町田の若い女性はこんな風に遊ぶのか!その衝撃をよそに原液が沈澱していくように濃密な後半戦はただただ傍観。もう何が来ても大丈夫。傍観するしかないから。無類のスーパーヒロイン映画誕生。続編(ニューヨーク出張編とか?)が観たいです。山中瑶子監督おめでとうございます。銀賞『侍タイムスリッパー』。昨年初めて時代劇のプロデュースに挑戦した私はニヤニヤが止まらない鑑賞(感傷)でした。安田淳一監督ありがとうございました。毎年金賞・銀賞を選ぶのも大変ですが候補を選ぶのはもっと大変です。空音央監督『HAPPYEND』は青春の傷口に社会的・政治的メッセージを擦り込むような映画表現とその勇ましさに感服!奥野瑛太さんに主演男優賞を捧げたい『心平、』の山城達郎監督、白銀の世界に真っ向勝負で挑む『プロミスト・ランド』の飯島将史監督のお二人は助監督のご経験を存分に活かしてこれからも優れた映画を作って欲しいです。竹岡寛俊監督『アダミアニ 祈りの谷』は今とても貴重な一本。多くの人に観て欲しい。木寺一孝監督『正義の行方』の技、技、技。絶妙に巧妙な仕掛けに恐れ入りました。マヒトゥ・ザ・ピーポー監督『i ai』、松本佳樹監督『地球星人は空想する』の溢れ出るイマジネーション。奥山大史監督『ぼくのお日さま』の豊潤な光と風。蘇鈺淳監督『走れない人の走り方』はもうただ恐るべき才能が生まれる予感。いやもう生まれているのか。『ほなまた明日』道本咲希監督の眼差しは、映画の中の若者たちがこの世界に生きていることに対する説得力がありました。同年代に道本監督がいる若者たちが羨ましい。さて・・・毎年200本強の新しい映画があります。審査員一同、がんばって選ばせて頂きましたが、候補から溢れてしまった映画も沢山あると思います。どうかご容赦ください。

2024年度
プロデューサー賞
関 友彦
TOMOHIKO SEKI
『箱男』
『あんのこと』
『若武者』
プロデューサー/製作プロダクション
プロデューサー/制作プロダクション
プロデューサー/製作プロダクション/配給

学生時代イギリスで自主短編映画を制作したことをきっかけに、2000年帰国後フリーランスの制作として多くの邦画や合作映画の現場に参加。2008年コギトワークスを設立。
これまで、制作プロダクションのプロデューサーとして多くの現場に携わってきたが、2020年以降は、自社製作作品において宣伝・配給も手掛けるようになる。またその活動は国内配給だけに留まらず、海外の劇場にも直接交渉を敢行し、上映を行っている。
本年、コギトワークスが参画した公開映画は、『王国(あるいはその家について)』 草野なつか監督、『蒲団』 山嵜晋平監督、『若武者』 二ノ宮隆太郎監督、『あんのこと』 入江悠監督、『つゆのあとさき』 山嵜晋平監督、『箱男』 石井岳龍監督、『ナミビアの砂漠』 山中瑶子監督、『青い記憶』 ヨシダシゲル監督の全8作である。
【コメント】
初めまして。コギトワークスの関と申します。新藤兼人賞のプロデューサー賞という、大変気骨のある賞を頂けたことに、とてもうれしく思っています。ありがとうございます。
3作品あるので、ちょっと長くなってしまうかもしれませんが、1つずつお話ししたいと思います。
『箱男』は、97年に実は映画化を進めていて、クランクインのときに頓挫をしたという経緯がありまして、いわゆる、映画化として幻の映画というふうにずっと言われてきました。2013年に石井(岳龍)監督から、「関君とやりたい企画があるんだよね」と言われて持ち込まれたのが、この『箱男』であります。
なかなか映画化が難しいということは、うわさに聞いていたので、引き受けるのに自信はなかったんですが、結局、映画化するまでに11年かかってしまいました。その11年のあいだに、いろんな出資者に交渉しに行ったんですが、皆さん「なかなか難しいね」っていうことで、なかなか実現できませんでした。
そんなときに、最終的にハピネットファントム・スタジオの小西(啓介)さんにご相談したときに、小西さんがひと言「やりましょう」と言っていただき、その言葉に11年間が報われたと言いますか、すごく、小西さんの男気に感謝しております。改めて、ありがとうございます。
その97年に出演が決まっていた、永瀬正敏さん、佐藤浩市さんにも、今回も出演していただくことができて、それも、とても大きなことだったと思っております。
石井監督がいつも、「映画は集団創作だ」というふうにおっしゃっておりまして、今回、この映画『箱男』は集団創作で出来た作品であると十分自負を持っております。ゆえに、こういった賞を受賞できたんだなと思っております。石井監督、改めまして、ありがとうございました。
人前でしゃべるの苦手なんですよね。すいませんね。
次、映画『あんのこと』ですが、この作品は、実際に起きた事件を基に映画化しております。鈍牛倶楽部の國實(瑞惠)さんが企画開発をされまして、入江(悠)監督と國實さんが、すごく丁寧な取材ノートを、当時の事件の取材のノートを映画化いたしました。
なかなかやはり、コロナ禍、まだコロナがすごく残っていた時期でもありましたので、いわゆる映画として成立させるのに、結構、困難を要しました。
ですが、入江監督のけん引力、そして、今年を象徴する主演である河合優実さんと一緒に、この「あんのこと」ということを製作できたことは、制作プロダクションをやってる身としましては大変意義があったなぁと感じております。
作品の制作上、社会への問いが結構多い作品であったので、公開されたあとに多くの皆さんに観られたことは、とてもうれしく思っております。ありがとうございました。
続きまして、映画『若武者』。この作品は、コギトワークスとは別の形で、U‐NEXTさんのサポートを受けまして、「New Counter Films(ニューカウンターフィルムズ)」という新しい映画レーベルを立ち上げた、それの第一弾の映画でした。
何が新しいレーベルかと言いますと、企画、製作、配給ということを一気通貫して弊社で行いまして、それを国内のミニシアターだけではなく、海外のミニシアターにも直接、セールスカンパニーなどを通さず届ける、という試みをした作品でした。
その、いわゆる売り上げですね、収益は、作り手である監督を始め、クリエーターたちに分配をしていこうということを掲げて立ち上げた「New Counter Films(ニューカウンターフィルムズ)」というレーベルの第一弾でありました。
結果、日本国内では25館のミニシアターで上映していただいたのと、海外は、ニューヨーク、カリフォルニア、UKなどの全4館で上映を行うことができました。
まだまだ、海外のミニシアターを直接交渉して上映、公開をしていくということは、本当にはじめの一歩なので、まだまだ本当に小さい数館ではあるんですけれども、これはもう今後とも、何十年にもわたってやっていき、日本国内と同じぐらいの館数を海外で開けれることができたら、もしかしたらマーケット的にもビジネススキームとして日本映画界が変わるんじゃないかなと思った、ベビーステップとしてやりました。今ある既存の映画界のビジネススキームが、全く悪いとは思ってないんですけれども、ただ、それにマッチングとして合ってない作品があることは確かだと思いますので、新たな選択肢を作るべく、自分たちで行動したという作品でした。
この『若武者』の動きがありまして、イギリス国内の映画館などに割とコネクションが多く出来ましたので、実は映画『箱男』のUKのセールス、セールスというか公開だけですね、配給は、弊社でやらせていただきまして、ヨーロッパで一番大手のシネコンのオデオンさんで、イギリス国内3ヵ所で上映していただくことになりまして、少しずつ、そういうことが広まっていけばいいなと思っております。
という3作品をやらせていただきました。
やはり、この新藤兼人プロデューサー賞を受賞させていただくということは、すごく正直、大きな自信になっております。映画のプロデューサーという職業が、若い、これからの人たちにとって憧れの職業になるように、「プロデューサーっていいな」と思われるように、今後もコギトワークスとして、力強い映画を作っていこうと思っております。今後とも、よろしくお願いいたします。
《2024年度 新藤兼人賞プロデューサー賞 講評》
今年の新藤兼人賞プロデューサー賞には、コギトワークス代表の関友彦氏が選出されました。
受賞の対象となった作品は、『箱男』(石井岳龍監督)、『あんのこと』(入江悠監督)、そして『若武者』(二ノ宮隆太郎監督)の3作品です。これらの作品の成立とともに作品内容に大きく貢献したプロデューサーであり、同時に厳しい日本映画の製作環境の中で、継続的に映画を作り続けている点が受賞の理由となりました。
映画製作を実現していくには、その作品への強烈な想いが成否を分けます。そして映画に対する深い愛情を持ち、孤立を恐れず突き進むひとりのプロデューサーがいなければ、映画作品が存在することはありません。関友彦氏はまさにそのようなプロデューサーのひとりであると確信します。
今回のプロデューサー賞授賞にあたって、関友彦氏の海外配給への新しい試みも紹介しておきたいと思います。ワールドセールスのエージェントを通さず、直接自分で各国のインディペンデント系映画館を訪ね歩き、自らのプロデュース作品を売り込み、公開を勝ち取ってきた点も大いに評価されるべきところです。
関友彦氏の更なる活躍への期待を込めて、プロデューサー賞を贈りたいと思います。
また今年のプロデューサー賞候補に、『SHOGUN 将軍』のプロデューサー真田広之氏が最後まで残ったことも記しておきたいと思います。
協同組合日本映画製作者協会 理事 山上徹二郎(シグロ)
過去受賞結果
年 度
金 賞
銀 賞
プロデューサー賞受賞者